私には今まで、帰る場所がなかった。
それに気付かされたのは大空洞でのセフィロスとの決戦の前日。クラウドの提案でみんなそれぞれ一度、大切な人のもとへ戻ることになったとき。
明日死ぬかもしれない、もう二度と会えないかもしれないという状況の中でその人たちの元へ帰っていくみんなの背中を見つめながら、私は底のない真っ暗な恐怖に怯えていた。
大切な場所が、私を待っていてくれる人がない世界で、自分がどう振る舞えばいいのかわからなかった。たとえこの戦いが終わり私が生き残ったとしても、そのとき自分がどうしているのか想像することができなかった。誰のために戦えばいいのかなんて……考えたく、なかった。
『ティファ』
クラウドが私に声をかけてくれたのは、みんなが行ってしまったあと、ひとりハイウィンドの中から外を見つめていたとき。
自分のことで頭がいっぱいで、クラウドがどうするのかまで考えられていなかった。だから、彼がここに残っているという事実は優しく、私の心の中を照らした。私の中にはじめて……自分は一人ではないかもしれないという気持ちが、芽生えた。
『ティファはどうする?』
忘れちゃったの? 私……ひとりなんだもん。どこにも行くところがないんだもの。
少し冗談ぽくクラウドに言う。行くところがないという恐怖と向き合う勇気がなかったから。
だけどそうやって下手な笑顔をつくる私から、クラウドは目を逸らしたりすることなく、優しい表情を返してくれた。
『忘れたか? 俺もひとりだ』
大丈夫だと。何も心配はいらないと。
『…一緒にいようか、ティファ』
クラウドの手をとり広い背中を見つめ、一緒に歩きながら思ったことを今でもよく覚えている。
ここにいたんだと。きっと、この人なんだと。私の大切な人は。私の……帰るべき場所は。
「今日は晴れてよかったね」
空を見上げながら歩いていた私にナナキがそう声をかけたのは、太陽がもう間もなく、星の反対側に隠れてしまうという頃。足元にいる彼にこくんと頷き返す。ナナキは炎を灯すしっぽをふらふらと上機嫌に揺らした。
「ほんとによかった」
「今日はきっと、星もよく見えるよ」
「…ありがとうナナキ。このために戻ってきてくれたんだよね」
「ううん、いいんだ。オイラもそろそろ帰ってこようと思ってたところだから」
一人旅の大先輩はそう言って、ずいぶん上手になった笑顔を私に向けてくれた。
あれから数日かけて、私はコスモキャニオンに着いていた。
寄り道してもいいと言われたとき、真っ先に思いついたのは綺麗な星空が見える場所に行きたいということ。ミッドガルもそうだったけれど、人の手が入りすぎたエッジという街からは、なかなか満点の星空を拝むことができないから。ニブルヘイムという……山の麓で育った身として、あの美しい星空を見に行きたいと思うことは不思議なことではないと思う。
それで候補に上がったのがコスモキャニオンだった。クラウドたちと一緒に世界をまわった中で、この場所から見る星空は別格だったから。この場所は……そうまるで、星に愛され守られ続けてきたような場所。
「戻ってくるの、ちょっと久しぶりなんだ」
コスモキャニオンの真ん中に位置する、大きな焚き火のもとへ二人歩きながら、ナナキは少し嬉しそうに呟く。
せっかくこの場所に行くのならと声をかけてみたのが、ここを故郷とする彼だった。彼は世界中を旅して歩き回っているらしく、連絡をとったとき長らく故郷に戻っていないのだと言っていた。戻りたくないのかと思って最初は遠慮したけれど、彼は何も動じることなく言ってくれた。
帰ることに理由はいらないんだと。私が声をかけた今が、きっと帰るタイミングだったんだと。
「おかえりナナキ」
「ただいま」
「おかえり! 久しぶりだなあ。何か忘れ物でもしたか?」
「違うよ、ちゃんとやることがあって戻ってきたんだから」
すれ違う人たちが嬉しそうに彼へ声をかける。「忘れ物だって、失礼しちゃうよね」と頬をふくらませる彼も、どことなく嬉しそう。あたたかいこの場所にお邪魔しながらナナキにはたくさんの家族がいるんだと思った。同じ故郷で育ち暮らしてきた大切なひとたちが。
「ナナキ、人気者だね」
「みんなまだ、オイラのこと子ども扱いするんだ。オイラも成長したんだけどな」
「うん、わかるよ。なんだか大人っぽくなったみたい」
「そうかなあ? へへへ」
ナナキが照れくさそうに笑ったころ、私たちは焚き火の近くに到着する。彼は慣れた様子でいつもの位置に腰を下ろした。私もそれに続く。仲間たちと一緒にここを訪れるたびに座っていたいつもの場所に。
ふうと息をはき空を見上げると、いまだ真っ暗になりきっていない紫の空には、すでにエッジで見るよりも多く星々が現れ始めていた。
(……きれい)
思わず口を開けてみてしまう。星空は不思議だ。どれだけ見ても飽きることなんてない。見慣れてしまうことなんてない。故郷でもそうだった。子どものころ毎晩のように部屋の窓から星空を見つめていたっけ。
どんな悲しいときも悔しいときも、星空だけは変わらずに私の上にあったから。
「ティファ」
名前を呼ばれて星空から目を離す。私を呼んでくれたナナキはしっぽをゆらゆらと振りながら、こちらを優しい目で見ていた。
「今回はひとりなんだって? 何かあった?」
「うん、ちょっと色々ありまして……」
「色々? ……クラウドと喧嘩しちゃった?」
「ううん、違うよ」
「よかった。二人が仲良しのほうが、オイラもうれしい」
本当に嬉しそうにしてくれるナナキに笑い返しながら、会う人会う人に「喧嘩?」と聞かれるほど心配させていることを痛感する。そして同時に実感する。私が、私たちが……たくさんの人たちに見守られているんだということも。
「ちょっとね、お店をお休みしなくちゃいけなくて。それで暇そうにしてたらね、せっかくだから一人で好きなところいっておいでって、みんなが言ってくれたの」
「そうなんだ。いいね、一人旅だ」
「うん、一人旅」
「旅はいいよ、ティファ。自分が何も知らなかったんだってこと、いろんな景色や生き物が教えてくれるから」
ナナキは上機嫌に喉を鳴らす。その瞳はとてもきれいで美しい。
「ナナキはずっと、一人で旅してるんだよね」
「そうだよ。みんなと一緒に旅するのも楽しかったけど、それと同じぐらい大事な時間を過ごしてる気がする」
(…すごくいい顔)
彼が一緒に旅をしていた頃よりも大人びて見えるのはきっと、旅を通じて成長してきたからなんだろう。その横顔は子どものそれではなくて、苦しいことや悲しいことをちゃんと乗り越えてきたものだった。
(……)
「…ナナキはすごいね」
「どうして?」
「だって、自分で旅をしようって決めたんでしょう?」
「うん、そうだよ」
「嫌だなあとか、さみしいなあとか……辛いなあとか思わなかった?」
バレットの一押しがなかったら、一歩を踏み出すこともなかっただろう自分のことを意識し、ナナキに尋ねる。
私のように短期間で、期間限定のものとは違って、ナナキはこの先ずっと旅を続ける。それは、人間とは違う生き物である彼だからこその行動なのかもしれないけど、彼が強い理由は決してそれだけではないと思った。
ナナキには勇気がある。寂しいことと向き合う勇気も……自分の弱さと向き合う勇気も。
「辛いことだらけだよ」
一人旅の大先輩はそういって笑った。
「一人で旅して歩いてるとね、今まで誰かが隠してくれていた、真っ暗闇が現れるんだ」
「真っ暗闇?」
「そう。そいつはどこに逃げても隠れても追ってきて、オイラの弱いところをグサグサ刺すんだ。見ないふりしたら余計大きくなって襲ってくる。それが怖くて苦しくて、オイラたくさん走り回ったんだよ」
「……」
彼の言う真っ暗闇の正体が何なのか、なんとなくわかるような気がした。それは未来かもしれないし、今なのかもしれないし、過去なのかもしれない。だけど間違いなくその真っ暗闇に力を与えてしまっているのは……自分自身。
ナナキは暗くなってきた星空を見上げながら、穏やかな声で話を続ける。
「でもね」
「……?」
「その真っ暗闇はね……ほんとうは、怖いものなんかじゃないって気づいたとき、消えるんだ。ふわっとね。消えたあとはすごく気分が良くて、だれかに合格って言われたときみたいな達成感を感じる。そのときオイラ、嬉しいんだ。きっとこれが強くなるってことなんだってわかるから」
(…そっか)
ナナキはそうやってひとつずつ乗り越えてるんだ。苦しいことがわかっていてもその道を自分で選んで、進んでるんだ。正解なんてない中で。誰も答えをもたない中で。
彼のまぶしさに思わず俯く。深く考えず、ひとり街から飛び出してきた自分自身を振り返る。
私の旅はまだ、一週間しか経っていないぐらい、短いものだ。旅と呼んでいいのかすらわからない。それなのに、エッジでみんなと、大切な家族と暮らしているときには考えもしなかったことをたくさん考えるようになった。向き合うことから逃げてきた問題が頭にたくさん浮かぶようになった。
その……真っ暗闇はナナキの言う通りとても大きくて怖い。油断をしたらあっという間に飲み込まれそうになる。連れていかれそうになる。一人きりで向き合う過去や恐怖は……とても、怖い。
そこまで考えて、ふとクラウドのことを思い出す。
配達屋を初めてしばらく経ってから……ひとり、家を出て行ってしまった頃の彼のことを。
(クラウドも、あのとき……)
こうやって一人、真っ暗闇に追いかけられていたの? 誰にも相談できず一人で、抱え込んでしまっていたの?
(……)
「……ねえ、ナナキ」
星空を見上げながら呟く。
「ナナキの言う、真っ暗闇のことって……誰かに相談してもいいの?」
ナナキのしっぽが大きく揺れたのが、視界の端に映る。彼に目をやると、ナナキはその美しい目で私を見てくれていた。
「もちろん。オイラも聞いてもらったもん。ヴィンセントとか、みんなにね」
「……じゃあ、私もナナキに相談してもいい?」
「喜んで。オイラに答えられることなら、なんでも答えるよ」
「ありがとう」
大きく息をつく。誰かに相談事をするなんて、いつぶりだろうと脳裏で思いながら。
「……あのね、私ね。今回はじめてこうやって、一人で歩いてるの」
「うん」
「いつもはね、誰かに連れてきてもらったり、守られたり……そこしか進む道が無くなったり……そうやって、出てきた目の前の道を進んできたの。そう思ったらね、自分で選んだ道って、実はなかったんじゃないかなって思っちゃって」
「……」
「思えばいつも成り行きで、流されてばかり。ニブルヘイムを出ることになったのも事件のせいだし、ミッドガルで暮らし始めたのも人のおかげ。そのミッドガルを出たことも、元を辿れば自分だけの意思じゃなかった。……エッジで暮らすようになったことだって……」
誰かのせいだと言いたいわけじゃない。むしろ私は「誰か」がいないと生きてこられなかった。誰かに助けられてきた。誰かが私に道を提示してくれた。こっちなら大丈夫だよ、こっちに進めるよって、たくさんの人たちが教えてくれた。
その中で……ずっと私の前にいたのがクラウドだった。クラウドは私が何度しゃがみこんでも諦めなかった。待っていてくれた。応援してくれた。私に生きる目的を……前に進みたいと思える理由をくれた。クラウドがいなかったら自分が今どうなっていたのか、どの道を進んでいたのか、想像することもできないぐらい。
だけど……だからこそ私は、自分が本当に望んでこの場所にいるのか考えてこなかったのかもしれない。怖かったから。自分の中を見つめることが恐ろしかったから。空っぽかもしれない自分自身と、向き合いたくなかったから。
ひとりで立つ勇気もない自分を、知りたくなかったから。
(……)
「……。私ね、ナナキ」
「…うん」
「まだ一週間ぐらいしか一人で旅してないんだけど……みんなに言われるんだ。自分のことを大事にねとか、自分で選んでいいんだよ……とか」
「……」
「言われるたびに考えた。私、自分を大事にできてなかったのかなって。ぜんぶね、全部……自分で選んだ道だって、思ってたんだ。だけど一人でこうやって歩いてるうちに……本当にそうだったのかな、なんて余計なことまで考えちゃって」
「…ティファ」
「……。今までそれなりに一生懸命生きてきたつもりだけど……自分は本当にここにいたかったのか、いるべきだったのかわからなくなっちゃって」
「……」
「……。ぜんぶ成り行き、だったのかな。……家族と、クラウドといっしょにいることも…」
話しながらだんだん声が小さくなっていくのがわかった。言葉にしてしまうと本当のことになりそうで。成り行きだと考えることが怖かった。今まで自分が感じてきたこと全てが一気に色褪せてしまいそうで。
焚き火の音だけが響く中、ひとり俯く。
だけど、ぽつぽつと呟く私の上手にまとまっていない話を、ナナキは最後まで遮ることなくじっと黙って話を聞いていてくれた。どう思ったかなと恐る恐る彼の方に目をやれば、彼はとても優しい表情で私を見ていた。
「…そっか。たくさん考えたんだね」
「……うん」
「ティファも今、真っ暗闇と戦ってるんだ」
「…そうなんだと思う」
ナナキはゆっくりと頷く。
「…でもね、ティファ」
「?」
「大丈夫だよ。その真っ暗闇はきっと、ティファ自身で乗り越えられるよ」
「……どうしてわかるの?」
「だって、オイラでも答えがわかったんだもん」
「ええ?」
答えがわかった? ナナキに?
思わず驚くとナナキは嬉しそうに笑う。その表情があまりに穏やかだったから、不安でかたまっていた体の緊張がゆっくり解けていく。
ナナキはもういちど星空を見上げる。それにつられて顔をあげると、いつの間にか空から色は消え、真っ暗な宇宙と星々が一面を覆い尽くしていた。
「……ティファはさ」
子どものような……あるいはもっと大きな存在のような、柔らかい声が私に語りかける。
「ティファは、誰と一緒にいるときが一番嬉しい?」
「…え?」
「いま帰るなら、誰のところに帰りたいって思う? 帰らなくちゃいけない、じゃなくて、ティファが帰りたいって思う人のことだよ」
(帰りたい場所……)
頭の中にその人のことを思い浮かべるのに、深く考える必要もなかった。
「……家族。マリンとデンゼルとバレットと……。……クラウド」
ナナキはまた嬉しそうな笑顔を見せる。
「でしょう? じゃあきっと、それでいいんだよ」
どういうことかわからなくて首を傾げれば、ナナキはその反応をわかっていたのか優しい声で話を続けてくれた。
「ティファはさ、さっき自分は流されてきたって、全部成り行きかもしれないって言ったよね」
「…うん」
「でもねオイラ、今も、旅をしてたときも、ティファをそんな風に思ったこと一度もないよ」
ナナキのくれる思いもしない言葉にきょとんとする。成り行きかもしれないという自分の中に生まれた振り返りたくない可能性を、彼は何の躊躇もなく否定した。
「ティファは今、誰といっしょに暮らしてる?」
「…クラウド」
「じゃあさ、クラウドと一緒に暮らそうって思ったのは誰?」
「……。…私」
「ティファは、クラウドに誘われたから一緒にいようって決めたの? クラウドと一緒にいるのは、クラウドのため?」
「……」
心の中に浮かぶ大切な人のこと。クラウドのこと。気づけばいつだって胸の真ん中にいる大好きな人のこと。
クラウドを思うだけで気持ちが柔らかくなる。クラウドのそばにいるだけで、大抵の嫌なことは忘れられる。笑っていてほしくて、彼が幸せであることが私も嬉しくて、そのためならなんでもできるような気になれる。
苦しいこともあるし、クラウドのために悲しむことだって多いけれど……それをわかった上でも一緒にいたいと思ってしまう。
だけどそれは、誰のため?
私は、誰のためにクラウドの隣にいるの?
(……)
「…ううん、違う。クラウドのためだけじゃない」
「……」
「私……自分のためにクラウドの隣にいる。私がいたいから、私がそうしたいから、クラウドのそばにいる」
言葉にしながらその気持ちを確かめる。つっかえることなく溢れ出す嘘偽りのない自分の言葉。
「でしょう」
ナナキはその答えが出ることを知っていたんだろう。驚くことなく何度も頷くだけだった。
「ティファはちゃんと選んでるんだよ。クラウドのいる場所にいたい、ついていきたい、そばで生きたいってこと全部、ティファが自分で決めてきたから……今、ティファはクラウドと一緒にいられるんだ。違うかな?」
「ううん。違わない」
「ね。ティファが離れようと思えば離れられたんだよ。だけど、ティファはそれを選ばなかったでしょう」
「…うん。私が、クラウドと一緒にいたいって思った」
「うん。難しく考えなくていいと思うよ。きっとね、ティファが一番楽しい、嬉しいと思う場所にいたらいいんだ」
ナナキの言葉を聞いて、焚き火を見つめながら遠い記憶を振り返る。
ニブルヘイム。待ってばかりじゃいやだからと、習ったこともない格闘技をパパの反対を押し切って習い始めたこと。
ミッドガル。悲しみ落ち込むだけの自分じゃ嫌だからと、バレットのいるアバランチに入ろうと思ったこと。そして、再会したクラウドのことをもっと知りたくて、クラウドの本当のことを知りたくて、旅についていこうと決めたこと。
ミディール。自分は偽物だと言ったクラウドの本当の声を信じていたくて、もう一度会いたくて、探しにきたこと。
そして……エッジ。今度こそ本当にクラウドのそばで、自分の幸せから逃げずに、生きていきたいと思ったこと。
全部全部、私が決めたことだったんだ。私が自分で選んできた道なんだ。
たとえそのきっかけが他の人や出来事であったとしても。それでも私は、自分のためにこの場所を選んできたんだ。
私は私のために……クラウドを、選んだんだ。
「……ねえナナキ」
「ん?」
「私、ちょっとだけわかったような気がする。……さっきナナキが言ってた、合格って言われたみたいな気分のこと」
「へへ、わかるでしょ? なんだか気持ちが明るくなるでしょ」
「うん。……ナナキのおかげだよ。ありがとう」
「オイラは思ったことを言っただけだよ。ティファが頑張ったんだ」
「…うん」
あのね。ナナキが照れくさそうに呟く。
「……オイラはね、まだその場所を探してる途中なんだ。帰りたいって思える場所」
「…コスモキャニオンじゃなくて?」
「もちろん、ここはオイラの帰る場所だけど……その、なんていうか」
「…家族?」
「そう、家族」
ゆらりと炎のしっぽは揺れる。
「…見つかるといいね。ナナキの家族」
「うん。オイラ、必ず見つけるよ。見つけたらまた、ティファとクラウドに会いにいくよ」
「待ってる。応援してる」
「ありがとう、ティファ」
嬉しそうに笑ったレッド。それからまた、星空を見上げる。
一緒に見上げた無限に広がっているように見える宇宙はとても広くて……私がここにいることを、私がここで考えているすべてを肯定してくれているような気持ちをくれる。このままでいいんだと、変わらずに輝く星たちは教えてくれる。
「…ナナキ」
「ん?」
「私……クラウドに会いたくなっちゃった」
「うん。じゃあ、会いにいかないとね」
「…いいかな。こんなに早く帰ったら、びっくりするかな」
「いいんだよ。クラウドがびっくりしても。ティファが帰りたいって思うなら、それで」
オイラもそうだったでしょ、とナナキは村を見渡しながら言う。
優しい彼に私はただ、ありがとうとだけ伝えた。
心は嘘みたいに軽かった。自分で見つけた光は、どんな光よりもあたたかく、強いものだった。