困るわ。あなたがいなくなったら。

 

この隠れ家を率いて行く人がいなくなる。代わりと呼べる人なんて、早々見つかるものじゃない。何とかなるさ、とあなたは笑う? 口にするのは簡単よ。残された側になったこともあるくせに、それはあまりに無責任だわ。

 

 

大変だわ。あなたがいなくなったら。

 

ルボルやカンタン、あなたのおじさま。あなたがいるから繋がってくれた人たちが沢山いる。あなたがいなくなってしまったら、彼らにどう協力を仰げばいい? 彼らなら大丈夫だ、とあなたは言う? あなたは自分の人の良さを知らないから、そう言えるんだわ。自分がどれほど人を動かす力を持っていたか知らないから、そう言えるんだわ。

 

 

いけないわ。あなたがいなくなると。

嫌なの。あなたが、いなくなると。

 

 

 

 

 

 

困るわ。あなたがいなくなったら。

 

昔話を一緒にしてくれる人が、いなくなる。あの頃はどうだったとか、懐かしいとか、寂しいとか。一人だけではどうしても処理できない「思い出」が、行き場を失って彷徨う。君は強いから平気だって、あなたはまた、そんなことを言う? 本当は私、強くなんてないの。あなたの前でそうありたいと願うだけで、本当はとってもちっぽけで、臆病なのよ。あなたという目標がいなければ、力を振り絞ることだってできないの。あなたという人がいなければ、自分が作り出した「思い出」にさえ、負けてしまうのよ。

 

 

大変だわ。あなたがいなくなったら。

 

あなたを守りたい。あなたを守るためにこの命を捧げたい。そう思って、私は今日まで生きてきた。そんなあなたがいなくなってしまったら、私は何に命を捧げればいい? 君は君のために生きろって、あなたはまた微笑む? 一度忌み嫌ってしまった自分を愛することが、どれほど難しいことか。あなたはそれを知った上で、そんなことを言うんだわ。残酷な人。ずるい人。私のあなたへの愛を、そんなふうに使わないで。私のあなたへの愛を、私自身に返さないでよ。

だめだわ、クライヴ。あなたがここにいないと。

 

 

 

 

必ずって、言ったじゃない。戻ってくるって、言ったじゃない。

 

あなたがくれた約束を果たして。あなた自身で、裏切り者にならないで。あなたが導いてくれた夢を、一緒に叶えて。そばにいて。行かないで。一人にしないで。一人にならないで。ここにいてくれるだけでいい。あなたが生きているだけでいい。あなたの声が聞きたい。あなたの名を呼びたい。あなたの寝顔を見つめて眠り、あなたの笑顔と共に目覚めたい。あなたと生きたい。もっとあなたを知りたい。もっと、あなたと話したい。もっともっと、あなたのそばにいたい。それだけなの。それだけなのに。

 

 

嫌なの。あなたが遠く離れてしまうなんて。

嫌なの。あなたに二度と、会えないなんて。

 

 

大丈夫、でもない。平気だよ、でもないの。

私がほしい言葉は、あなたの「ただいま」だけなのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は彷徨う。再びあなたを見つけるまで。

私は守る。あなたを見つけると誓った約束を。

 

嫌なの。あなたのいない世界なんて。

嫌なの。あなたのいない明日なんて。

 

灰色から動かないの、クライヴ。

あなたのいない、世界のままじゃ。

 

 

 

 

アプニア

 

(無呼吸、)

 

 

 


fin,