大きく腕を振って、からっぽの花籠を揺らしながら歩く教会までの一本道。もう片方の手には、花籠に入りきらなかったサンドウィッチボックス。自分一人で食べるときの三倍くらい用意したから、ずっしり重いサンドウィッチボックス。
「ふんふんふーん」
誰も聞く人いないから、気にせず歌う鼻歌。歌詞も覚えていないメロディーにのせるのは、心の中に大人しくしまっておけない、嬉しい気持ちやわくわくした気持ち。お母さんに「はやく帰ってくるんだよ」って釘を刺されるくらいにバレバレの、浮き足立つ気持ち。
今日は一人で起きられた。今日は一人で料理もできた。服だって自分で選んだ。髪だって自分で結べた。
早起きしたから眠かったけれど、お母さんが作るサンドのほうが絶対においしいけれど、それでも一人で頑張った。
「……これで足りるかなあ」
大きく足を開いて歩きながら見つめる、大事な大事な運び物。作ってるとき一生懸命だったから考えもしなかったけど、サンドウィッチはちゃんと、あの人の大きな体に栄養として入ってくれるだろうか。おにぎり派、だったりした? パンはかさかさで力が入らねえ! とかいう、ムキムキの人が言いそうなセリフ、言われたりしないかな。
だけど想像するのは「おいしい」と目を輝かせてくれる笑顔。期待するのは完食してくれる未来。何かと忙しいあの人がたっぷり時間を割いてくれた今日を、楽しい思い出でいっぱいにすること。できるかな。たくさん笑って、もらえるかな。胸の中でむくむく広がる、自分が感じることになるとは思いもしなかった、不安定なもどかしい想い。
今日は何を話そうかな。なんの話を聞こうかな。
あの人は聞いてくれるかな。聞いてくれるだろうな。笑ってくれるだろうな。きっときっと、きっと。
「今日もいい日に、なーれ」
人の手で作られたプレートの隙間から見える青空を見上げ、気持ち大きめの声でつぶやいた。
空の上の誰かに届きますようにって。気まぐれでもいいから、今日を素敵な一日にしてくれますようにって。
エアリスのひとりごと
fin,