今回の仕事は期間が長い。しかも人使いの荒い依頼人のせいで働き詰めだ。配達だけじゃなくてモンスター退治までしなくちゃいけない。そんなこんなで一週間は帰れないと思う。だから一週間頑張るためのエネルギーが必要だ。そのためには、ティファの協力が必要なんだ。

 

以上を、俺は流暢に言葉にし、真剣な表情で耳を傾けてくれているティファに伝えた。ティファは、何かを疑うことなく「うんうん」と頷いてくれる。俺があまりに真面目に言ったものだから、長期の仕事を口実に、違うことを目論んでいると思わなかったのかもしれない。夜、キッチンで、明日の料理の仕込みをしているティファのもとにかけつけた、俺に対して。

 

「どうしたらいいかな?」

 

なんでもするよ、と言わんばかりの優しい問いかけに、俺の中で罪悪感が膨らむ。本当は、長期の仕事があろうとなかろうと、ティファに「協力」して欲しい内容も、欲求も変わらなかった。むしろ俺は、ラッキーと思ってしまったほどだ。言い訳になりうる仕事が、都合よく発生したことに。

 

「…ティファに」

「うん」

「……ティファに、して欲しい」

 

あまろ露骨に伝えるのもどうかと思い、自分の唇を指差してティファに口付けをねだる。目はじっと、その瞳を見つめたまま。

 

「え……あ、」

 

ジェスチャーが通じたのか、ティファはじんわりと頬を赤めた。だけどそのまま頷いてくれた様子に、俺は息をのむ。こんなスムーズでいいのかと、内心慌てながら。

 

少し緊張しつつ、ティファがキスをしやすいよう体を屈める。唇が俺のそれに触れるまで、15秒。重なってからも……15秒。

 

(…ティファ)

 

「……」

「……。は、はい」

「……ありがとう、ティファ」

 

口に出たのは、心からの本音だった。そして声には出さないものの、心から思った。これで、この思い出だけで一週間は耐えられると。なんなら帰宅後も、暫く思い出に浸れると。

 

だが、ティファのくれる力がこんなものじゃないことを、俺は直後、思い知ることになる。

 

「…次は?」

「……え?」

「…キスだけでいいの?」

 

思わぬ追加の褒美の余地に、心臓が飛び跳ねる。無意識にティファの腰にまわしていた腕に、力がこもる。

 

まさか、そんな。ティファの方から、こんな。

 

「…、よくない」

「……」

「…まだ、足りない」

 

ティファの腰を抱き寄せながら、半分本当が混ざった嘘をつく。身体中に熱い血が巡るのがわかる。俺には言えなかった。もう十分だなんて。キスだけで満足だ、なんて。

 

じゃあ、次はどうしようか。頬を赤らめたまま、俺の指示を待ってくれているティファに、再び身を屈め耳打ちをする。どこまでなら許されるのかと、胸を高鳴らせながら。

 

再びこくんと頷いてくれるティファに見惚れて、俺は覚えてはいけない味を記憶しようとしていた。それは甘美とは少し違う、罪のような味だった。

 

 

 

 

 ミルクに悪知恵

 

 

 


fin,