冬はいい。ティファがベッドを出るのが、夏より少し、遅くなるから。

おはようとシーツの中、小さな声で挨拶をし合ってから、すでに数分。俺の腕と身体の間にすっぽりと収まるティファが、ここから抜け出そうともがく気配は、今のところまだない。

 

「……」

「……、うう」

「…ん?」

「ん……外、寒そうだなって」

「…うん」

 

寝返りをうとうと一瞬外に出された、俺より細く長い腕。ひんやりした空気に触れたその腕を、ティファはぶるりと身震いしながら、慌ててシーツの中に戻した。

 

またひとつ生まれた、ティファを抱きしめるための口実を、俺は大切に大切にさすって暖める。一秒でも長く、ティファが「やるべきこと」より俺を選び続けられるように、ここにいるための餌を撒き続ける。

 

「……クラウド」

「?」

「…てのひら、あったかい」

「…眠いからな」

「ふふ、朝、苦手だね」

「…ティファもあたたかい」

「…どこかの、誰かさんのおかげかも」

「…どうやらそいつは、ティファにだけ体温を分けるらしい」

「ふふ……それはそれは、光栄ですなぁ」

 

ティファは気づいているだろうか。ゆっくりと力をこめる、ティファを抱く腕の力に。いつまで、気づかないふりをしてくれるだろう。どれくらいの力であれば、ティファはここに留まってくれるだろう。

 

離したくない。離れたくない。肌の一ミリも、呼吸の距離さえも。

 

「…ねえ、クラウド」

「…ん?」

「今って……」

「……」

「ううん……。まだ、起きなくていいかな」

「…ああ。まだいいよ」

 

ティファの脚に自身のそれを絡めながら、大きく息をつく。瞼を閉じるのは、ティファがそれを閉ざすのを確認してから。人差し指の背で撫でた頬は、柔らかい。額に音なく口付けをすることで、ティファの心をここにより強く止めようとする。

 

ふと視界に、カーテンの隙間から覗く朝日が映った。その光に気づかれないように、俺はティファを閉じ込めた腕に見えない鎖をかけた。

 

 

 

 

遮光

 

 

 


fin,