「ティファ、おやすみ」

 

自分から出る一番優しい声で、俺に寄り添うように横になるティファに、挨拶をする。閉じていた瞼を開けて、綺麗な瞳を覗かせてくれたティファは、俺と目を合わせるなり微笑んだ。

 

「うん。おやすみ、クラウド」

 

(…ティファ)

 

胸の中に溢れる愛しさ。どれだけ見つめても、見つめ足りない大事な人。

 

暗闇の中目を逸らさず、ティファは何かをじっと待ってくれている。自惚でなければそれは俺だけが許された行為。俺だけがティファにできる、特別な挨拶。それを欲しがってくれるティファをできるだけ長く見ていたくて、わざとゆっくり身をかがめれば、ティファは安心したように再び瞼を閉じた。

 

(……ティファ)

 

唇を重ねる。なるべく優しく。だけど刺激をしない程度にそっと啄む。これを単なる儀式的な挨拶にしたくないことを、ティファにわかっていてもらうために。

 

特別な理由がなくてもティファに触れられる。ティファに口付けができる。何よりティファが、それを求めてくれる。

 

こんな、幸せなことがあろうだろうか。こんな、何度見ても見足りなかった夢が叶うような幸せが、他に。

 

「……」

「……。…へへ」

「…ん?」

「…クラウドのこれ、好きだなって思って」

「…どうして?」

「優しいから。いつも、いい夢が見れそうって思う」

「…ティファ専用のまじないだ」

「ふふ……」

 

嬉しそうに、はにかんでくれるティファの頭を抱き寄せながら、俺は大きく深呼吸をする。これ以上ない幸福で、体と心をいっぱいに埋め尽くすように。

 

「…ティファ」

「うん?」

「……ティファ」

「…なあに」

「…ありがとう」

「…急にどうしたの?」

「……言いたくなった」

「ふふ、おまじないしてもらったの、私の方なのにね」

「……。うん……」

 

離れたりしないよう強く抱きしめてから、俺はようやく瞼を閉じる。脆く壊れやすい幸せというものを、できるだけ長く続かせたいと願いながら。形が崩れることがこれから何度もあったとしても、もう諦めたくないと。

 

ティファを抱いて眠る夜は、いつも優しい夢を見た。例え恐怖がここに忍び寄ったとしても、この優しさには何も敵わなかった。

 

 

 

ちいさなベッド

 

 

 


fin,