「わあ」
買い物を終えてから店を出て、自分の吐息が真っ白に変わった瞬間、思わず声が出た。
家を出たときには、そんなことはなかったはずなのに。しばらく外にいるうちに気温が下がってきたのだろうか。冬は知らない間にここに来て、これから深くなる寒さを告げに来たようだった。
「…ティファ?」
隣から聞こえる、不思議がるような声。反射的に視線を送った先には、クラウドが頭を傾けて私を覗き込んでいる。
どうやら彼は、まだ真っ白になった吐息に気づいていないらしい。あっという間に暗くなった街の、夜の街灯の光が、その目のなかできらきらと瞬いた。
「ほら。息がしろいよ、クラウド」
「…本当だ」
「ね? どおりで寒くなったと思った」
「寒いのか?」
「え? うん……あ!」
思わず声を出してしまったのは、クラウドが何も言わず上着を脱ごうとしていることに気がついたから。
これだけ長く隣にいると、わざわざ最後まで見届けなくたってわかる。優しいこの人が、寒いと訴える私を暖めようとしてくれていることくらい。
「ん?」
「いいよ、クラウド。ちゃんと着てて」
「どうして」
「どうしてって……」
「気にするな。俺は大丈夫だ」
何をもって大丈夫としているのか。いつも自分のことを後回しにして守ってくれるこの人に、私は何も言い返せなくなる。
言葉を探しているうちに、ふわりとこの身を包む、あたたかい上着。クラウドの香りに包まれて思わず笑顔になってしまう自分の、なんと都合のいいことか。
そんな私を見て、クラウドがほっとしたように微笑んでくれるから、ますます状況を打破することができない。
「…ありがと、クラウド」
「うん。ましか?」
「ん、平気。あったかい」
「そうか。ならいいんだ」
言葉なく手は繋がれる。温かいクラウドの大きな手が、冷えてしまった私の指先を、包み込むように握る。
はく息は、ふわふわと白い。白息の向こうに見える横顔は、今も昔も変わらず、私の胸の中をじんわりと溶かしていく。
(……)
きらきらして見えるの。ふとしたとき、ふとした瞬間。
きっと私がこの人を、好きだなあって感じている、そんなときに。
「…日が落ちるのも早くなったな……」
「……」
「…ティファ?」
「え?」
「どうした?」
「あ、ご、ごめん! ぼーっとしてた」
「…眠くなるにはまだ早いぞ」
「あ、もう。子ども扱いして」
「人間はあたたまると、眠くなるからな。ティファの手も、もう温かい」
「…それなら、手、離す?」
「まさか。…せっかく繋いだのに」
最後の方は早口で、言い終えた頃、クラウドはすでにそっぽを向いていた。だけど、一気に赤くなったその耳が、彼の気持ちを教えてくれる。私だけじゃないんだってことを……あなたはいつも、示してくれる。
「…ふふ」
「……。ティファ」
「ん?」
「…早く帰ろう」
「…うん。帰ろう」
結局、繋がれたままの手をクラウドに引かれ、歩き出す。何度噛み締めたかもわからない、このまま同じ家に帰ることができる幸せを、握り返す手に込めて。
寒くなる気温とは裏腹に、ぽかぽかと自分のほっぺたが熱くなるのがわかった。
この冬も温かくなりそうだと、星が知ったら首を傾げそうなことを、クラウドの隣でこっそり思った。
冬晴れ
fin,