「見つけた」
朝から仕事部屋でお仕事をしていたはずのクラウドが、子どものような表情で、寝室にひょっこり顔を出した。見つけた、という言葉の意味から考えると、知らない間に探させてしまっていたのだろうか。何にも知らない私は、クラウドのお仕事が終わるのをこっそり待ちながら、上機嫌にちょっとした化粧をしていただけなのだけど。
「…見つかっちゃった?」
見つけたことを、どうか褒めて。そんなお願いが聞こえてきそうなほど無邪気な表情に、私はわざとらしく肩をすくめてみる。私の「降参」ともとれる言葉に、クラウドはますます満足そう。ためらいなくこちらに歩み寄っては、身をかがめ、ドレッサーの椅子に腰掛ける私を背中から抱きしめた。
「ふふ、今度は捕まっちゃった、かな?」
「うん……」
「おつかれさま。お仕事ひと段落したの?」
「した。それで、ティファを探していた」
「別に、逃げも隠れもしてないのに」
「下にいるかと思ったんだ。料理でもしているかと」
「ざんねん。お出かけの準備でした」
「ん? ……うん、綺麗だ」
「あはは、もう。クラウド、私がお化粧してなくても同じこと言うよ」
「…事実だから仕方ない」
「…クラウドさんは、褒め上手ですねえ」
「ティファに限ってだ」
「ふふふ、そうでもないけどなあ」
「そうか?」
「そう。クラウドは優しいからね」
「……。そうでもない」
ぴったりと感じる、クラウドの体温。呼吸。一緒に暮らしているから似てきたはずなのに、やっぱりどこか違う、唯一無二の優しい匂い。照れてしまい俯いたクラウドの、揺れる綺麗なまつ毛は、今日もきらきらと私の心をときめかす。
「さ! ごめんね、お待たせしました」
「もう準備できたのか?」
「うん。クラウドさえよければ、行こっか」
「ああ」
クラウドに手をとってもらい、椅子から立ち上がる。私たちが向かおうとしている先は、何も特別な場所ではない。お店の買い出し。あるいは、我が家の献立を成立させるためのお買い物。そして……別の見方をするのならば、これは。
「…へへ」
「ん?」
「なんでもないよ」
「…いいことがあったのか?」
「どうしてわかったの?」
「ティファはわかりやすいからな」
「じゃあ……当ててみる?」
「……」
ぎゅっと強く握りしめられたのは、さっき自然と繋がれた手。上機嫌はこれが理由だろうと、クラウドは自信たっぷりな表情とともに、行動で答えを示す。正解以外の返答ができない私は、ただただ笑ってそれを享受する。からめた指に私からも、力を込める。
ふたり、まるで音楽に合わせるように、並んで階段を降りた。たとえリズムが崩れたって、この手が繋がる限り何度でも合わせられるのだと、誰かに教えてもらわなくても、私たちは知っていた。
rhythm リズム
fin,