真夜中、体にたまった熱に起こされた。

 

あんまり心地いい目覚めじゃないと思いながら、重い瞼をゆっくり開く。眠りについたときよりも、明らかに暑くなっている寝室。吹き込んでいた夜風が止んでしまったのだろうか。熱帯夜という言葉がぴったりだと、暗闇の中で思った。

 

なんとかしないと。今よりも自分を快適な状態にしないと、朝までこのまま起き続けることになる。明日も普通にお仕事だ。いくら人より体力に自信があるつもりだとはいえ、暑さにうなされながら徹夜をするなんてことは、なるべく避けたい。

 

そんなことを考えながら、私は自分の左半身に目を向けた。

暑い中、私にピッタリと寄り添って、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てる……クラウドに。

 

「……」

 

暑くないのかなあ、と思う。前髪を少しさわれば、クラウドも汗をかいているのがわかった。だけど、その綺麗な顔は決して苦しそうには見えない。眉間に皺も寄っていないし、うなされるほどの暑さは感じていないのかもしれない。

 

そんなクラウドのすべすべのほっぺたを、刺激しない程度にゆっくり撫でながら、私はぼんやり考える。暑いなあ。ちょっと離れてほしいなあ。でもやっぱり、離れてほしくないなあ。暑さのせいか眠気のせいか、あまりはっきりとせず、ゆらゆら気持ちが揺れているのを自覚しながら。

 

 

 

春でも夏でも、秋でも冬でも、クラウドと私の距離はあまり変わらないように思う。

 

お互いが、お互いの方に体を向けたり。どちらかが、どちらかの背中を抱きしめたり。ちょっと喧嘩をしたりして、少し気まずくなってしまうようなことがない限り、私たちはいつも、背中合わせ以外の方法で眠る。

 

抱きしめるのも、抱きしめられるのも心地がいい。近頃は、体のどこかが触れ合っていないと落ち着かないほどだから、いつの間にかそうして眠ることが、当たり前になっているような気がする。

 

 

 

すやすやと聞こえていた寝息が、一瞬ふわりと止まる。

クラウドが目を覚ましてしまったのに気づいたのは、そんなときだった。

 

「……」

「……あ、」

「……。ティファ……?」

「ごめんねクラウド、起こしちゃった……」

 

この部屋には私とクラウドしかいないのに、寝起きの彼を刺激したくない気持ちで、声はつい、ひそひそ声になった。

 

クラウドは目を半分だけ開けたまま、ぼーっと私を見ている。私を抱きしめる腕の力はそのまま。少し掠れた低い声に、どこか色気が混ざっていて、私は自分の体がまた一つ熱くなるのを感じた。

 

「…どうした……?」

「…何でもないよ。目が覚めちゃっただけ」

「……ほんとか?」

「うん、本当。……それより、クラウド」

「ん……?」

「…ううん、何でもない」

 

暑くない? だいじょうぶ? 少し離れたほうがいいかな。

 

提案しようかと、一瞬考えたそんな言葉は、やっぱり自分の口から出てくることはなかった。

 

かわいそうに、急に起こされて眠そうにするクラウドの頭を撫でて、私は微笑む。ごめんね、せっかく気持ちよく眠っていたのに。そんな気持ちを、撫でる手のひらにこめながら。

 

「…そうか……」

「……」

「…大丈夫なら、いいんだ」

 

(……わ、)

 

私の無事を確認してくれたクラウドが、ほっとしたように大きく息をつく。そしてそのまま、さっきよりもしっかりと私の体を抱き寄せる。予想外の暑い状況に、思わず出そうになった声。だけど決して音にならない「少し離れて」の言葉。

 

(……ふふ)

 

困ったなあ、もう。どうしようもないな、私も。

 

明日から眠るときは、ベッドサイドに水を持ってこないと。この人を押し除けてキッチンに行くなんてこと、私にはできそうにない。もしかするとクラウドの中には、暑かったら離れて眠るという選択肢がないのかもしれない。それならそれで、私もそのルールに従うまでだ。クラウドがそうなら仕方ない、なんて言って、彼のせいにしてしまいながら。

 

 

 

暑いなあ、と思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。

眠れないかもしれないなんていう憂いは、必要がなかった。眠りを妨げる暑さよりも、クラウドが触れてくれている心地よさの方が、何倍も何十倍も、私の心に沁みたから。

 

 

 

Sultry night

 

 

 

 


fin,