彼を癒そうとするとき
自分も癒されるような感覚になるのは なぜだろう
「…ジル」
ほとんど倒れ込むように 彼はベッドに入ってくる
半分しか開いていない瞼
私を抱く手は熱く 体が「眠い」と主張する
「おつかれさま、クライヴ」
「ああ……」
乾燥した頬に 滑る私の手
繰り返し 髪を撫でてあげると
彼はうっとりとした表情を見せた
「……ジル」
「なに?」
「……君ともっと話がしたい」
「ふふ。そんな眠そうな顔で言われても」
「まだ……眠りたくないんだ」
「…そうね。時間が足りないわね」
「ああ……」
クライヴには今 どこまで意識があるのだろう
そう思ってしまうほどに彼は眠そうで 睡魔も手強そう
彼の大きな掌が 私の頬に触れる
その手に頬擦りして ふたり微笑む
「……ジル」
「?」
「今日は……何があった?」
「…今日はね、みんなで保存食作りをしたの」
「保存食か……」
「ええ。余裕があるときに作っておこうって」
「…有難いな。君の……料理も食べてみたい」
「…やめたほうがいいと思う」
「どうして?」
「裁縫と違って、あまり自信がないの」
「ジルは……きっと、上手いよ」
「多分、期待外れでがっかりするわ」
「はは……それならそれで、俺は君を好きになる」
「もう」
調子がいいんだから
そう返してしまうのは一種の照れ隠し
彼が嘘を言わないのは 知っている
だから私は 笑顔以外の表情を作れない
「…他は……?」
「そうね……あとは、タルヤのお手伝いをしたくらい」
「…そうか……いいな……」
「…クライヴ?」
「ん……?」
「もう、寝ましょう。疲れているだろうから」
「……まだ」
「だーめ」
「ジル……」
「ふふ、だめよ」
かわいい人 愛おしい人 大好きな人
本当はもっと甘やかしてあげたいけれど
本当はもっと あなたとの時間を作りたいけど
「…おやすみ、クライヴ」
「…ん……ジル」
「なあに」
「…………」
「……ふふ」
キスをして
そう自分の唇を指差す彼の願いを 叶えない理由はない
「……」
「……」
「……。どう? これで眠れる?」
「…ああ。……きっと……いい夢を見られる」
「それはよかった」
「…ありがとう……」
「…私の方こそ。ありがとう」
愛をくれて 愛させてくれて
「……おやすみ、ジル」
私の命を 癒してくれて
「…おやすみ。クライヴ」
まどろみ
fin,