「ふ〜……」

「……」

「風が気持ちいいね、クラウド」

「…ああ」

 

 

コスタでふたり、

ベンチに座って、

みんなの用事の終わり待ち。

 

 

「みんな、まだかな?」

「…もう少しかかると思う」

「え? どうしてわかるの?」

「…さっきエアリスとナナキが、意気込んでボールを蹴りにいくのを見かけたからな」

「あはは、ランワイルド、だっけ。好きだね、あの二人」

「…ティファは、いいのか?」

「ん?」

「遊びに行かなくて。ユフィも、その辺で遊んでいたぞ」

「あ……私はいいや。ちょっと休憩したかったし。クラウドも、いいよ? 遊びにいっても」

「俺は……いい。ここにいたい」

「そっか。ならいいんだけど」

「……。ティファは、疲れたのか?」

「え? あ、ううん、大丈夫だよ。ほら……ちょっと人混みが苦手で」

「…わかる。俺もだ」

「ニブルヘイムには、ここまでの人、いなかったからね」

「いたとしても、ここまで騒がしい人間はいなかった」

「ふふ、うんうん」

 

 

海を見ながら、思い出話。

ふたりでいる今が心地いいのだ、とは

なかなかお互い、言い出せないまま。

 

 

「……」

「……なあ、ティファ」

「……?」

「…ここの海は、ニブルの海と全然違うよな」

「あ……そうだね。ニブルの海は、何ていうかもっと、荒々しかったよね。冷たい、っていうか」

「うん。山の方なんか、とても泳げたものじゃない」

「…昔は、怖かったなあ」

「怖かった?」

「うん。地平線? ずっと続いてて、終わりが見えなくて。海に落ちたら最後、もう戻って来れないんだと思ってた」

「……実際に、海に出てみてどうだ?」

「ん……広くてまだ怖いけど、泳ぐのはちょっと楽しい」

「ティファは泳ぎも上手いからな」

「そうかなあ。適当だよ?」

「普通の人間は、適当には泳げない」

「あ。普通の女の子じゃないっていうこと?」

「、違う。悪い意味じゃないんだ。……でも、気を悪くしたらすまない」

「ふふ、ごめん。大丈夫、ちゃんとわかってるよ。褒めてくれてありがとう」

「…ティファ」

 

 

知っているようで、知らないこと。

知らなかったから、嬉しいこと。

 

 

「……」

「……」

「…ねえ、クラウド」

「ん?」

「もう少し休んで、それでも誰も戻ってこなかったら……どうする?」

「…そうだな。ティファの食べたいものを、食べにいく」

「そ、そんなに食いしん坊じゃないよ」

「さっき、出店の方を見てるときに口が開いてたぞ」

「! もう、クラウド」

「今なら食べられるかもしれないな。しかも、タダでだ」

「どうして?」

「…俺の奢りだ」

「え! クラウドが買ってくれるの?」

「……。いらないなら、いい」

「ううん! 欲しい。行きたいです」

「…そうか」

「……。い、いつ行く?」

「……今?」

「…うん! そうしよう」

 

 

慣れないことも、全部。

らしくないことも、全部。

 

 

「わあー、嬉しい。楽しみだな」

「やっぱり食べたかったんだな?」

「それは……。はい」

「ふ……」

「あ、笑った」

「…早く行こう。エアリスたちのゲームが終わる前に」

「ふふ、そうだね。見つかったらクラウド、みんなの分も奢らなくちゃいけなくなるもんね」

「……。それはごめんだ」

「ふふ……」

 

 

ふたり一緒に立ち上がり、賑わう方へと歩き出す。

まだ手は繋げない。けれどきっと、いつか、もうすぐ。

 

 

「ふー……」

「……」

「やっぱり風、気持ちいいね」

「……ああ」

 

 

 

ここに、光風

 

 

 


fin,