汗をかいてしっとりとしている、広くてごつごつした背中に両腕をまわす。自分に抱き寄せるように力を込めてしまうのは、1センチの隙間もなく肌を重ねていたいから。
そんな私の抱擁に、身を委ねてくれたクラウドは今、ゆっくり大きく肩で息をしている。体を重ねることに夢中になって、少しの間忘れていた呼吸を取り戻すように、ゆっくりと。
クラウドに合わせるように、私も音なく深呼吸を繰り返す。それからうまく力の入らない両脚を持ち上げ、クラウドの脚に絡めた。あなたとまだ繋がっていたいのだと、離れないで欲しいと、言葉以外で訴えるために。
「……、」
「……」
「…ティファ」
「……ん?」
「…平気か?」
「……うん」
果てたあとに私の名前を呼ぶ、クラウドの声が好き。
行為中、こちらが切なくなるほど一生懸命に呼んでくれる声も大好き。けれど、終わったあとのクラウドの声は、それとは対照的なほど落ち着き穏やかになる。気づかないふりができないくらい、強く感じるの。クラウドの想いや、お互い格好をつける必要がなくなった事後に残る、純粋無垢な気持ちが。
だから私は、クラウドを抱きしめる。抱きしめて、離せないでいる。きらきらと綺麗で繊細なその想いを、できるだけ感じていたくて。
「……」
「ティファ……」
「…なあに」
「……ううん。…かわいい」
「もう……突然」
「…突然じゃない。ずっと思ってる」
「……。あんまり言われ慣れてないから、照れるよ」
「…他の奴らも、ティファにそう言うだろ」
「…違うよ。みんなじゃなくて、クラウドに」
「……、」
「……クラウドのは、違うの」
私の顔を覗き込み、あたたかい両手で頬を包んでくれていたクラウドの瞳が、ぱちぱちと瞬いた。それから、こちらが恥ずかしくなるほど嬉しそうに、屈託のない笑顔をみせてくれる。自分の心から出てきた本音が、クラウドにとっても幸せなものなのだと悟って、私も笑顔以外の表情を思い出せなくなる。
クラウドはキスをくれる。涙がじんわり滲むような、優しくて柔らかいキスを。私はそれに応える。まるで会話をするように。好きだよ、嬉しいよっていう気持ちを、口付けにこめる。
言葉は言葉。行為は行為。口付けは口付け。手のひらは、手のひら。
たくさんの手段を使って、私たちは想いを通わせる。すべてを伝えきれないことさえ、喜びに代えながら。
「……」
「……あ、」
「……」
「…クラウド」
「……。うん」
「…その、また……固く……」
「…ごめん。わかってる」
「ふふ……」
「……困ったな」
「ん……?」
「…繋がっているのかいないのか、わからない」
「何が……?」
「…体と、心」
「……」
「…今はこのまま、ティファを見つめていたいのに……体が別に、ティファを欲しがってる」
「…クラウド」
「ティファにもっと触れたいし、ティファともっと話がしたい。……全部、別なんだ。いろんな自分が、ティファを求めてる。どれを優先すればいいのか、いつも優劣をつけられない」
「ふふ……うん。わかるよ。……渋滞、するよね」
「…ああ。渋滞してる」
はにかむように微笑んだクラウドは、私の体のあちこちにキスをし始める。頬に、おでこに、首筋に、胸に、唇に。
定まりきらない口付けは、どこから着手すればいいかと迷うクラウドの気持ちを表しているようで、私も一緒になって微笑んでしまう。全てが嬉しいから。たくさん求めてくれることも、迷ってくれる、ことさえも。
クラウドの脚に絡めた両脚に、私はきゅっと力を込めた。求めているのはあなただけではないことを、知ってもらうために。
「……、…ティファ」
「…ひとつずつ、ね」
「ひとつずつ?」
「うん。したいこと、ひとつずつ」
「…ああ。そうだな」
「……何からしたい?」
「…ティファは?」
「私は……クラウドがしたいことが、したい」
「それは、俺もだ」
「ふふ……どうしよう」
「…なら、主張が激しい体から」
「あはは」
「…優しくする」
「…うん。お願い」
約束を交わしてから、私はようやく体の力を抜いた。
背中を抱いていた手は、クラウドが繋いでくれる。絡めていた脚には、クラウドが触れてくれる。
そうされるのが嬉しいことだということを、言わずともクラウドは、もうわかってくれていた。
jam
fin,