あなたと目が合わなくなった。

 

「先を急ごう」

 

仲間が戦闘で怪我を負い、みんなで治療しようと慌てているとき、しゃがみ込んだ頭上から聞こえた。やけに明るい声。まるで一人だけ、この世界と違う場所にいるようなその人は、怪我をする仲間に目もくれず、ただ進行方向だけを見つめて呟いた。

 

「…冗談だよな?」

 

治療にあたろうと真っ先にしゃがみ込んだバレットが、真面目なトーンで尋ね返す。その声には「冗談であってくれ」という願いが込められているような気がした。

 

「……」

 

私自身も、同じ願いを持って見つめた。未だこちらを振り返らず、だまって先を見つめている……大事な人を。

 

(…クラウド)

 

あなたと目が合わなくなった。

あのときから? ううん、それよりも、前から。

 

「…ほ、ほら、バレット」

「あ?」

「そんなことより、早くみんなで治療しよう」

「……。そうだな」

 

(…なぜ)

 

なぜ私は、フォローを入れるのだろう。なぜ私は、この人を庇おうとするのだろう。今味方になるべきがどちらかなんて、考えなくてもわかるのに。

 

頭を横に振って、こぼれ出しそうな涙を堪えて、私も治療に加わる。

 

 

 

人を癒すことが誰よりも得意だった、あの人はもういない。率先してこの場を笑顔にしてくれた、あの子はもう、どこにもいない。

 

(……)

 

「……」

「……、…ふう」

「なんとか治ったか!?」

「うん……きっとこれで、大丈夫だと思う」

 

少し前まで、あの子がひとりで癒していた傷を、数人掛かりで治す。私の背後にいるクラウドが、何もせず立ち尽くしているのを嫌ほど感じながら。

 

なんとかみんな、行動できる状態になってから、私たちはようやく彼の言う「先」へ目を向ける。

 

わかってる、わかってるよクラウド。先に進まなくちゃいけないことぐらい。みんな、わかってるんだよ。それなのに、それなのに。

 

それなのに。

 

「……。ごめん、お待たせ」

 

私はただ、彼の言う「先」を見つめたまま、クラウドを追い抜かして歩き出す。クラウドがどんな目で、どんな顔でこちらを見ているかはわからない。今の私は、クラウドを振り返る気力がない。

 

(……)

 

あなたの目を、見れなくなった。

 

あのときから?

ううん。あのときだって、見つめていられたはずなのに。

 

 

 

 

ヘミオラ

 

(あなたは、どれ)

  (わたしは、どこ)

 


fin,