名誉ある賞はいらない。世界を救った英雄でなくてもいい。何かの一位になる必要もない。みんなに知られていなくていい。
出会えたから。ティファと出会えたから。
魔法が使えなくてもいい。剣を扱えなくても構わない。人より豊富な知識もいらない。勘なんて鈍くてもいい。
出会えたから。ティファの、手をとれたから。
この世で得られる一番の幸福を、俺は生まれたそのときに授かった。あまたある世界の中で、俺はティファと出会える場所に生まれた。狭く何もないあの村で、ティファがこの世に生を受けたとき、俺の最大の幸福は決まった。たとえこの先、何者にもなれなくても。たとえこの道が、イバラ続きの道だとしても。
この手をとって、どこまでいこうか。ティファが望む道なら、どこへでも。
当たり障りがなくていい。波乱万丈もいらない。名前を覚えてもらえなくてもいい。存在さえ、歴史から忘れ去られてしまっていい。
ティファがいるから。ティファが手を、握り返してくれたから。
ヒーローでなくて、いい。英雄なんてもう、いらない。抱いた憧れや夢、叶わなかった願い。何もかも、そのままでいい。格好が悪くたって、情けなくたって構わない。
本当に必要なことは、そんなことではないのだと……俺はティファから、十分教わったのだから。
「クラウド」
遠くでティファの声がする。俺は、今自分が行なっていた作業を全て中断し、ティファのもとへ立つ。
進む先には光が見える。強すぎず、弱すぎず、何かをあたためるような柔らかい光が、俺を先でずっと、待っている。
「…ティファ」
手を伸ばせば、ティファはここにいた。ティファは、この手をとってくれた。
本当は必要がなかったもの。それは俺を遠回りさせ、その身を犠牲にしながら、俺をティファへと繋いでくれたんだ。
ファーストページ
inspired ストーリーボード / 上白石萌音さん
fin,