「最近ね、クラウドの紹介で来たっていうお客さん多いんだ」
「俺の?」
「うん。宣伝してくれてる?」
「いや……意識的にしているつもりはないんだが」
『いやあ、あのクラウドさんがめちゃくちゃ美味しいっていうからさ』
『クラウドさん、このお店の話をするときだけよく喋るんですよ』
『あのクラウドを笑顔にさせる店はここか!?』
(……)
ご飯をもぐもぐ食べながら、涼しい顔でそう言ってのけるクラウドを見守りつつ、私はお客さんが教えてくれる言葉の数々を思い出す。確かに「クラウドにおすすめされて」という言い方をした人はいない。みんながお店に来たいと思ってくれた動機はどれも「あのクラウドが」というもの。下手に笑顔を振りまいて仕事をしないクラウドが、笑顔を見せてからだというもの。
それは、たくさん宣伝してもらうよりもずっと嬉しい、私にとっては一石二鳥の広告である。
(…見てみたいなあ、お店の話をしてくれているところ)
「…ティファ」
「ん?」
「変なおと……客は来ていないか? そういう奴らの中に」
「え? みんないい人だよ。さすがクラウドのお客さん、って思ってた」
「…そうか。ならいいんだ」
「中には、毎週来てくれるようになった人もいるんだ」
「…男か?」
「? そうだね」
「……まずいな」
「…クラウド?」
「いや……。今後、仕事中の私語は慎む」
「ええ? お客さん増えて、嬉しいのに」
「…背に腹は変えられないんだ」
「もう、なにそれ」
申し訳ないと思いつつ、つい微笑ましくみてしまう、クラウドの深刻そうな顔。旅をしているときから思っていたけれど、クラウドはとても心配性だ。心配することなんて何もないのに、といつも思うけれど、ストレートにそれは言えない。言うとたいてい「ティファは何もわかっていない」と、今度はむっとした顔をされるのを、わかってきたから。
(…ふふ)
ずいぶん長い間、一緒にいる。いいところも悪いところも、お互いたくさん見せてきた。
それでも、やっぱり想いは湧き出る。愛おしいという気持ちは、膨らみ続ける。
「…ね、クラウド」
「?」
「心配してくれてありがとう。……それと、大丈夫だよ」
「……」
「私は、クラウドしか見てないから」
「…、ティファ」
真剣に悩んでいた彼の表情が、ぱあっと華のように明るくなったのを見届けてから、私は照れ隠しも兼ねてクラウドに背中を向ける。彼がカウンター席から立ち上がり、ぱたぱたとキッチンの中に駆け寄ってくる音を、こっそり楽しく聞きながら。
後ろから、思い切り抱きしめてくれたときに見えたクラウドの横顔は、柔らかかった。きっと彼は、この笑顔でお客さんを惹きつけてくれているのだろうな。そんな小さなやきもちを抱えながら、私はその体温に身を委ねた。
ひきよせ、ひきよせ
fin,