「俺、クラウドにはなりきれませんでした」

 

 

目の前の人が、目の前のクラウドが、何語を話しているのか、何を言っているのか、誰に伝えているのか、一体どの世界の人なのか、私には何もわからなかった。私の脳が、私の心が、私が死なないために、一度理解する能力をシャットダウンさせた。

 

目の前の人が、目の前のクラウドが、私の知っているはずのクラウドが、私が信じていたはずのクラウドが、一斉に振り返って「ごめん、今までの全部嘘だったんだ」と、冷酷に私を突き放したような気がした。すでにそのクラウドたちは私の手の届かないところにいて、感情のない、固まった、血の通わない表情で私を見ていた。いや、そもそもそんなクラウドたちが本当に存在していたのかもわからない。わからない、わからないわからない、私はもう何もわからない。

 

それ以上のことを何も言わないで欲しかった。それ以上の事実が例えこの世界にすでに横たわっていたとしても、その事実のある世界に私を組み込んで欲しくなかった。私をいま、彼が言葉を口にした15分前の世界に連れ戻して欲しかった。そこに閉じ込めて欲しかった。事実を事実と認識するまでの私になりたかった。それが例えどれだけ苦しくても、その世界がどれだけ偽りに満ちていたとしても、今の私を守るすべはもうそこにしかないように感じた。

 

 

 

「ティファさん」

 

 

 

(やめてよ)

 

 

 

なんてよびかたをするの。なんてめをしているの。どうしてそうやってわたしをみるの。どうしていまわたしのなまえをよぶの。それはわたしのなまえじゃない。あなたによんでほしいなまえじゃない。なまえをよんでほしいのは、あなたじゃない。

 

やめて、やめてよ。わたしはいまこわれないようにがんばっているのよ。じゃましないでよ。いつもみたいにおうえんしてよ。わたしをまもってよ。わたしにわらってよ。そんなわらいかたじゃなくて、じしんまんまんに、だいじょうぶだっていってよ。

 

 

 

ねえおねがい、おねがい、おねがいおねがい、クラウド。

 

 

 

「……いつかどこかで、本当のクラウドくんに会えるといいですね」

 

 

おね が い

 

 

 

わたしを

 

「  」ないで


fin,