「わ、」

 

仕事を終えてたっぷり汗をかいたあと、服を着替えようと纏っていたシャツを脱いだクラウドの背中に、わざと勢いをつけて抱きつく。まさかくるとは思っていなかっただろう衝撃に、クラウドは珍しく少しよろけた。

頬を寄せるのは火照った体、ひんやり感じるのはその体を覚まそうとする彼の汗。新陳代謝のいいクラウドの、流したての健康な汗を好きなものとして受け取ってしまう自分が、やや変わっているという自覚はある。

 

「、ティファ」

「…おかえり」

「ただいま。…ごめん、汗かいてるだろ」

「うん……知ってる」

 

クラウドが触れてくれるのは、私が背中から彼の胸にまわしている腕。彼の指の腹の感覚と手のひらがくれる安心感が好きで、できることならずっと触れていてほしいと思ってしまう。

 

「……あ」

 

大好きな背中にしがみつき、幸福感を味わいながら深呼吸していると、ふと強い力でまわしていた腕を剥がされる。嫌だったかな、なんて思ってるうちに、クラウドはくるりと体の向きを回転させ、あっという間に私と向き合った。

 

「……うん。こっちがいい」

 

ぱちりと合う宝石の目。その目はまだ……狼ではない。

 

(……、)

 

「…クラウド」

「ん?」

「……シャワー浴びる?」

「…におうか?」

「ううん、そうじゃなくて……」

「…?」

「……そうじゃ、なくて」

 

 

伝われ、伝われ、私の気持ち。何言ってるんだ、はしたないって、私自身が自分を隠してしまう前に。

じいと見つめた視線の先に、ありったけの想いを込める。ぱちくりと瞬きをしたクラウドが一生懸命頭を働かせてくれているのを、私は顔を徐々に赤らめつつ黙って見守り続ける。

 

「……ああ」

 

なるほど。そう呟くクラウドがふわりと目の力を抜いたとき、まわりの空気は香りを変えた。触って欲しくて仕方のなかった固い指が私の汗ばんだ首に触れたあと、キャミソールの紐にかかる。

 

「…ごめん。気付くのが遅れた」

「……。遅いよ」

 

すこしの強がりを許して。背伸びをしてみたいの。恥ずかしがりやの私がまだ、大胆であることを許してくれているから。

待ち焦がれていたキスをようやく唇で受け止めるとき、厚い胸板にぴたりと手を添えた。どくんどくんと波打つ鼓動に、からだを火照らす自分がいた。

                        

 

 

どうぞ湿度はそのままで

 

 


fin,