「寒かったでしょ」
熱いポタージュの入った器に両手を添えながら頷く。帰宅直後、料理ができるまでこれで寒さを凌いでと、ティファにいれてもらったもの。熱すぎるそれは、凍え切った両の手を体温まで戻すのにちょうどいい。
テーブルに肘をつき、ポタージュで暖をとっているあいだに次々と並べられていく料理。ロールキャベツ、グラタン、トマトの入ったいつものサラダ。湯気の立つ料理に思わず顔をほころばせていると、向かいの席にティファが腰掛ける。
「おまたせ」
暖かい部屋に、灯り。手の中にティファのいれてくれたポタージュ。テーブルの上にティファが作ったうまい料理。目の前には……こっちを見て微笑んでいる、ティファ。
(……夢みたいだ)
「……ん? クラウド?」
「……あ、すまない…。…いただきます」
「うん。どうぞ」
ポタージュから手を離し、ナイフとフォークを手にして、料理を口に運ぶ。あたたかい食べ物に、今度は体の中まで温めてもらう。ちょうどいい、何故か安心する味付けに心の中で息をつく。ティファの料理の温もりは、うまいなんて言葉では多分、百分の一も表現できない。でも、それでもやっぱり。
「……うまい」
「そう? よかった」
(……それしか言えない)
満足げに笑ってくれるティファに見惚れながら、口を動かす。
本当はもっときちんと伝えられたらいいのに、いつも汲み取ってくれるティファに甘えてしまう。もっと言葉を伝えたいのに、うまい料理を次々と口に押し込んでしまう。
それを全部、ティファが嬉しそうに見つめてくれるから……俺は、反省することが、いつもできない。
「………」
「……ふふ」
「…?」
「…おいしそうに食べるね、いつも」
「……。……うまいからな」
「…ロールキャベツ、そっちの味の方が好きでしょ」
「……うん」
「やっぱり」
食べる速度が違うと、ティファがどこか誇らしげに言う。見られてるものだなと思いながら、その事実を嬉しく思う。
(…ティファ)
なあ……ティファ。
夢の中にいるみたいだ、なんて言ったらティファは笑うかな。どうしたんだって心配するかな。
「……」
「ふう……やっぱり今日、寒いね。寒いと、これから配達大変だね」
「…うん。……ティファ」
「ん?」
「……」
「…どうしたの、ふしぎな顔して。…あ、まだ何か欲しい?」
そう言いながら首を少し傾ける、まだ優しい温もりをくれようとする大切な人に、俺はせめて微笑み返す。
「いや……。…もう、十分だ」
「そう?」
「…うん」
(…ティファがいるなら…これ以上、何も)
「……ありがとう」
「ん? どういたしまして」
俺よりもずっと柔らかく微笑むティファに見惚れながら、思う。彼女はきっと……笑顔の端から心の底まで、あたたかいものでできている。
(……)
両の手も体の中も、心までも、いつのまにか随分とあたたかくなっていることに気づきながら、俺は再び料理を口に運び始める。ティファに見守られながら、ティファのそばでうまいと感じる。
これを夢だと言わず、他に…どんな夢を見ればいいのだろうか。
「…ねえ、クラウド。今日ね……」
楽しそうに、当たり前のように、自分にあったことを教えてくれるティファに頷きを返しながら、静かに願った。
夢ならば、覚めないようにと。夢でないのなら……どうかこのまま。どうか、どうか。
SEVENTH HEAVEN
fin,