「うう、寒い寒い」
暖め忘れていた部屋の中、薄手のパジャマに身を包み、温もりを求めて二人ベッドへ小走りする。
「クラウド、はやくはやく」
寒さに耐え切れない私。意外と平気そうなクラウド。
一足先につめたいシーツの中に潜り込んだ私。そんな私をおかしそうに見つめながら、のそのそゆっくり、ベッドの中にきてくれるクラウド。
人肌……ならぬクラウドの肌を求め、体を寄せたとき、冷え切った私の足の指先がクラウドに触れた。
「…、…」
「あ、ごめん、足先冷たかった?」
「…いや、平気だ。……寒いな」
「うん……寒いね」
今のはさすがに冷たかったと思う。でもクラウドは確かに一瞬顔をしかめたあと、すぐに「なんのことだ」という表情をする。強がりなのか穏やかなのか、文句を口にするのが苦手なとても優しい人。
「ふう、……寒い寒い」
寒さを理由に、体をいつも以上に密着させる。それに便乗する形で、肺いっぱいにクラウドの香りを吸い込む。
脚を絡めてあたためてくれるのは、今しがた彼を傷つけた指先。その角張った指は、私の首と腰にまわる。
クラウドは私を抱き寄せる。
私もクラウドを抱き寄せる。
(……)
頬をすり寄せた厚い胸板の奥から聞こえる、とくんとくんという心臓音。私の体を覆い隠すように抱きしめてくれる、太く逞しい腕。
ベッドの檻につつまれて、全身全霊でクラウドに触れる。しずかな一瞬の間に、この人を好きだとたっぷり感じる。
「……」
「……あたたまってきたか」
「…うん。……クラウドの体温貰いすぎたかも」
「いいよ。俺のでよければいくらでも譲る」
「ふふ……あったかいままでいてくれないと困るよ」
あなたの体温は、こうして寄り添えるきっかけになるから。私が冷たいことは、あなたにあたためてもらう言い訳になるのだから。
口が裂けても言えないこと。育て上げた、私の欲望。
「……」
「…ねえクラウド」
「…?」
「……。やっぱり、寒いね」
「…ああ。……離れられそうにない」
離れる気なんてないくせに。
見え見えの照れ隠しさえお互いにできないまま、私たちは抱き合う。温もりを繋ぎにして。冷たささえ仲間に入れて。
寒さなんて、本当はなかった。
あなたを見つけたあの日から。あなたの光に触れた、あの夜から。
『さむいね』
fin,