子どもたちが側にいてくれてよかったと思うときがよくある。

 

例えば、どこかの誰かさんの帰りを今か今かと待っているとき。お店の営業という自分の仕事がひと段落して、考えなければいけないことがなくなったあと、取り扱いが厄介な気持ちはどすんと落ちてくる。寂しいな。まだかな。用意してたご飯、冷めちゃったんだけどな。ちらちら見てしまう時計。今日は8時には帰ってくるって言ってたのに……と、10時を指す針を見つめながら心が駄々をこねる。仕方がないってわかってるのに。頑張ってくれてるの知ってるのに。

 

「クラウド、まだかなあ」

 

そんなとき私は、隣から聞こえる柔らかな声にほだされる。ぽつりと呟いたのはマリン。さっきまで一緒にお皿の片付けを手伝ってくれていた。私と同じように時計を見つめながら、マリンはわかりやすく不機嫌な顔をする。

 

「8時に帰ってくるって言ってたのにね」

「クラウド、まーた遅れるから、ご飯冷めちゃってるよ」

 

素直に思いを口にするマリンと、その隣でわざとらしくため息をついて見せるデンゼルを、私は申し訳なくもほっとした気持ちで見つめる。ああ、私だけじゃなかった。不安に思っているのは自分だけじゃなかったと、クラウドへの想いを共有する。

 

子どもたちが側にいてくれてよかったと思うときが、よくある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「あ! クラウドだ!」

 

聞きたくて仕方のなかった声が聞こえたのは、そこからもう少し時を進めた10時半。ぱっと見たとき、少し疲れているように見えたクラウドだけど、マリンとデンゼルが突撃すればその表情はすぐ柔らかくなった。

 

「っ、おかえりクラウド!」

「おかえり!」

「…ただいま。すまない、遅くなった」

「大遅刻〜」

「待ちくたびれちゃった」

 

子どもたちはそれぞれ、クラウドの手を引っ張ってはぶらぶら揺らし、彼が帰ってきたことへの喜びを表現する。文句を言いつつ二人とも笑顔で、それはちゃんとクラウドにも伝わっているように見えた。

 

(……あ、)

 

ふと、顔をあげたクラウドと目が合う。クラウドは口元と目元で少し、微笑んでくれる。私も微笑み返す。おかえり。お疲れ様。それと、ありがとう。

 

「クラウド!」

「ん?」

「おれたち先に部屋に行ってるから、ご飯食べたら来てくれよな」

「今日、パズルするの手伝ってくれるんでしょ?」

「ああ、出来るだけ早くいく。……先に始めてくれて構わないが」

「おれたちだけじゃもう、次わかんないもん」

「早くきてね!」

「…わかった。急ぐよ」

 

クラウドを解放したマリンとデンゼルは、何度も「急いで」という注文をしてから、慌てて階段を駆け上がっていく。どうやら、前から二人で一生懸命やっているパズルの続きをクラウドにお願いしたいらしい。そういった細かい作業はクラウドの方が得意だし……子どもたちはきっと、何でもいいからクラウドとの時間を過ごしたいんだろうと思った。

 

ふう、と。決して困ったようには聞こえない、純粋なため息をついてから、クラウドはようやく食卓に座る。子どもたちと彼との会話を聞きながら、既に温め始めていた料理を出すと、クラウドはありがとうと私の目を見て言った。

 

「おつかれさま。ゆっくり食べてね……って言いたいところだけど」

「…どうやら、あまり時間はなさそうだ」

「ふふ。人気者は大変だね」

 

苦笑しながらも料理を頬張るクラウドの表情が明るいのは、気のせいではない。子どもたちとお話しするとき、子どもたちのことを考えているとき、クラウドは活き活きしているように見える。疲れてなんかいられるか、といった感じだろうか。子どもたちの相手をするのは得意じゃないと言うけれど、クラウドもたぶん嬉しいのだと思う。子どもたちに頼られることも、家族を支える一人として力を求められることも。

 

だから、やっぱり思ってしまうの。

子どもたちがいてくれて本当によかった。おかげさまで、ほかでは得ることのできないこんなにも穏やかで嬉しい時間を、クラウドは過ごすことができているのだから。

 

「……、ご馳走様」

「うん。ぺろりだねぇ」

「…うまかった」

「よかった。……あ、お皿そのままでいいからね」

「でも、」

「いいから、早く行ってあげて。子どもたち待ってるよ」

「……。わかった。ありがとう、ティファ」

「どういたしまして」

 

席を立ったクラウドは、軽い足取りで二階で待つ子どもたちのもとへと急ぐ。残されたのは、お米粒ひとつ残っていないある意味綺麗な食器たち。あんなに慌てて食べていたのに……端々から伝わる彼の優しさと丁寧さが嬉しくて、ひとり口元を緩める。

 

「……よし」

 

クラウドはおそらく、真っ直ぐ子ども部屋に向かっただろう。きっとシャワーを浴びるのは、子どもたちを寝かしつけてからになるはず。だったら私が今のうちに入って、浴室を暖めておこう。子どもたちとの遊びが彼にとって「ご褒美」であっても、今日、疲れていることには変わりないだろうから。

 

私は、上の階から聞こえてくる子どもたちの嬉しそうなはしゃぎ声を聞きながら、優しく優しくお皿を洗った。今流れている時間は、自分の人生の一部とは思えないほどゆったりとしたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あらら」

 

ずっと賑やかだった子ども部屋が静かになっていることに気づいたのは、シャワーを浴びて外に出たときだった。パズルの制作チームが解散したのかなと思ったけど、こっそり部屋を覗き見た先にあったのは……おかしな形で寝落ちしてしまっている三人の、微笑ましい光景。

 

パズルを終えたあと、お話でもしていたんだろうか。ベッドの上、それぞれ不恰好に、毛布もかけずに寝てしまっている。自分のベッドの上で大の字になっているマリン。なぜか枕側に足を持っていって、大きな口を開けて寝ているデンゼル。そして、デンゼルのベッドの端っこで縮こまるようにして眠る、唯一の大人。

 

「ふふ」

 

つい、声に出して笑ってしまう。なんて愛おしい光景なんだろう。ベッドの隅っこでくちゃくちゃになっている毛布を広げて、ひとまず子どもたちに掛ける。クラウドは……ごめんね、ちょっと小さいけれど、子どもたちのお昼寝用のブランケットで我慢して。

 

ひとりひとりが見せてくれる寝顔は……親ばか、とでも言うんだろうか。天使そのもののように見える。遊び疲れて眠ってしまうなんていう環境を、この子たちに、この人たちに用意できている幸せが胸の中で込み上げる。

 

浴室は暖めてあるけど、クラウドはこのまま子ども部屋で寝かせてあげたほうがいいかもしれない。というか、こんな気持ちよさそうに寝ている人を起こすなんてこと、私にはできない。

 

「……おやすみ、みんな」

 

みんなを起こさないように、ゆっくりベッドに手をついて、ひとりひとりの頬に挨拶のキスをした。家族の大切な時間を時間を壊してしまわないよう、柔らかく、愛をこめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、今夜ひとり、広々とベッドを使って眠ることになると思っていた私の見込みは、意外にすぐ外れた。

 

真っ暗でしんとした寝室。灯りを点ける間もなくダブルベッドに潜り込み、大きく深呼吸しながら体の力を抜き、目を閉じたとき。ぎいと古い音を立てて開いたのは、ついさっき閉じたはずの部屋の扉。

誰か起きてしまったのだろうかと慌てて体を起こす。よたよたと力無い様子で部屋の中に入ってきたのは、クラウドだった。

 

「クラウド」

 

真っ暗で表情はあんまりわからないけど、目を擦りながらこちらに歩いてくる彼に、声をかける。

ごめんね、起こしちゃった? すぐに聞こうと思っていたその問いかけは、私の体の上にどっさりと覆いかぶさってきたクラウドの行動によってかき消された。

 

ずしりと感じる体重。それから、寝起きの人が持つ独特のあたたかい体温。

よほど疲れているのだろう。私に体を預けたまま、ため息をついて動かなくなったクラウドの髪を撫でると、彼は頬をすり寄せてくれた。

 

「……ティファ…」

「…おつかれさま、クラウド」

「ん……ティファも」

「ごめん。寝てたのに起こしちゃったね」

「いや……自分で目が覚めた。……毛布、掛けてくれたろ」

「ふふ、うん。みんな寝ちゃってたから」

「すまない……ありがとう」

 

消え入りそうなクラウドの声。眠いのが伝わってきて、思わず私があくびしてしまいそう。

だけど正直、それでもここに帰ってきてくれたことが嬉しくて、さっき感じた愛おしさとは別の愛情が生まれる。これは、そう。ちょっとわがままな方の、幸せ。

 

「……ありがとね、クラウド」

「ん……?」

「子どもたちと遊んでくれて。すごく嬉しそうだった」

「…うん……。…夜ふかしさせてしまった」

「いいよ。寂しいなって思いながら寝るより、ちょっとの夜ふかしのほうがきっと、子どもたちも嬉しい」

「…それなら……いいけど」

「今日、ずっと楽しみに待ってたからね。クラウドが帰ってくるの」

「……。…ティファは?」

「私ももちろん、待ってた」

「よかった……」

「ふふ」

 

待っていたに、決まってるでしょう。恥ずかしくて子どもたちの前で、おおっぴらには言えなかったけど。こうしてクラウドに抱きしめてもらう時間のために、一日を頑張っていると言っても過言ではないのだから。

ゆっくり、何度も髪を撫でながら、自分が安堵に包まれていることを感じる、この時間なら何時間続いてもいい。自分勝手な独り言が許されるのなら、このままずっとクラウドの腕の中にいたい。

 

クラウドも大変だ。彼のことが大好きな人が、この家に三人もいるのだから。

 

「……。…シャワー浴びないと」

「…明日でいいんじゃない? 疲れてるでしょ」

「でも……ティファと寝たい……。今日は一日外だった、汚れてる……」

「いいよ、気にしなくて。ちょうど明日シーツ洗おうと思ってたし」

「……ほんとに?」

「うん。このままでいいよ」

「…わかった……じゃあ……このまま寝る……」

「…おやすみ、クラウド」

「……おやすみ………ティファ……」

 

(……)

 

ぐうぐうと、気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたのは、おやすみの挨拶から1分も経たない頃だった。かわいくて、愛おしくて、胸がいっぱいになってしまって、私はしばらく眠れそうにない。なんとも幸せな悩みだ。

 

クラウドと私の間に挟まってしまっている毛布を引っ張りだしてから、二人の体の上に掛けて、私もようやく目を閉じる。私にのしかかるクラウドの体は重い。だけど今はそれが、嬉しかった。とてもとても、嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

次の日の朝。目が覚めたとき、私の体の上にあったはずのクラウドの姿はなかった。

寝坊してしまったんじゃないかと、寝ぼけ眼で時間を確認する。時計が指す時刻は、設定したアラームが鳴る30分前。つまり、ねぼすけさんになったわけではなさそう。

 

じゃあどうして、いつも起こすまで寝ているクラウドがもう起きているんだろう。今日はお昼から配達だと言っていたから、早起きの必要はないはず。

 

もしかしたらシャワーを浴びているのかもしれない。ぼんやりとそんなことを考えながら、私も寝起きの半身を起こす。

だけど次の瞬間に浮かんだ、子どもたちを起こさないといけないという思いつきは……階下から聞こえてきた、賑やかな声によって解消された。

 

「……?」

 

確かに聞こえる、マリンの笑い声とデンゼルの声。その声が誰かに話しかけて、誰かが答えているときだけ無音になる。……考えられるのは、あまり大きな声で話さないクラウドただ一人。どうやら三人は知らない間に、ものすごい早起きをしていたらしい。

 

どうしたんだろう。みんなの声が明るいことに安心しつつ、ベッドを抜け出しカーディガンを羽織ってから、部屋のカーテンを開ける。いい天気。昨日クラウドに話した通り、今日はシーツを洗って干せそう。

 

家族で一番遅く、自分の部屋を抜け出して階段を降りていく。早起きの理由は全然わからないけれど、何であれ朝ごはんを急いで作らないといけない。今日は冷蔵庫になにがあったっけ。ベーグルは昨日買った分がまだ残っていたはずだから、簡単なサンドくらいなら作れるかもしれない。

 

とんとんとんと、足取り軽く降りた先。最初に視界に入ったのは、シャワーを浴びたてのふわふわしたクラウドの髪だった。

 

「……! ティファ」

 

声をかけるより早く、クラウドが階段を降りている最中の私に気づき、振り返る。

おはようと返事をしようとしたけれど、続くクラウドの声に言葉は音にならなかった。

 

「デンゼル、マリン。ティファが起きてきた」

「え! ティファ、早起き!」

「デンゼル早く、これここに入れて?」

「待って、急いだら壊れちゃうだろ」

 

(?)

 

ここからは見えないところで、デンゼルとマリンの慌てる声が聞こえる。何が起こっているのか尋ねようとクラウドに目を向ければ、クラウドはおかしそうに子どもたちを見つめてから、私の方に歩いてきた。

 

「どうしたのクラ……っ、わ!」

 

驚いて、へんな声を出してしまったのは、クラウドが急に私を抱き上げたから。突然宙に浮いた体。びっくりして足をバタバタさせても、クラウドはびくともしない。どうしたのともう一度尋ねても、彼は嬉しそうに私を見るだけだった。

 

「く、クラウド?」

「マリン、デンゼル。ティファは捕獲した。ゆっくりでいい」

「ありがとクラウド!」

「デンゼル、頑張って!」

「ほ、ほかく……」

 

何が何だかわからないけれど、どうやら子どもたちが私に見せたくない何かを隠していることは把握する。クラウドの「捕獲」というのはつまり、足止めに成功したということだろう。クラウドのわんぱくな様子を珍しく思いつつ、上機嫌でこちらを見つめ続けている彼に、事情を聞こうとする。

 

「おはよう、ティファ」

「お、おはよう……」

「ごめん。起こしたな。朝から煩かっただろ」

「ううん、それはいいんだけど……どうなってるの?」

「…ちょっとした準備が滞っててな」

「準備?」

「できたー!」

「クラウド、ティファ、もういいよ!」

「わかった」

「?」

 

私は全然わかってないけど……と心の中で思っているあいだに、クラウドから解放される。頭の上にはてなを浮かべる私に対して、クラウドは穏やかに微笑んでみせた。

 

「お待たせ、ティファ。こっち」

「え……?」

 

クラウドに手を引かれながら、私はようやく階段を最後まで下りる。彼に誘導された先にあるのは、満足そうな顔で私たちを見る、デンゼルとマリン。

 

ずっと状況を把握できずにいたけれど……小さな二人の手が持っているものを見たとき、すとんと優しい気持ちが心の底に落ちてきた。

 

「ティファ、おまたせ!」

「これ、どうぞ」

 

二人が満面の笑みで私に差し出してくれたのは、完成された大きな大きなジグソーパズル。昨夜も、その前の夜からもずっと、子どもたちが必死に作っていたのは知っていた。だけどまさか自分に渡されるとは思っていなくて、驚きと喜びでつい、言葉が詰まる。

上手な反応もできないまま子どもたちから完成されたパズルを受け取ると、そこには夜空一面に広がる星々が描かれていた。

 

「こ、これ……二人が一生懸命作ってた……」

「うん、そう! 昨日完成したの」

「ティファにあげようと思って作ってたんだよ」

「私のために?」

「だってティファ、星好きでしょ? あのね、クラウドとデンゼルとお使いしてるときに、お店で見つけたの」

「それでクラウドに買ってもらって、ずっと作ってたんだ。……クラウドに手伝ってもらわないとだめだったけど」

 

驚きを隠せず、口を開けたまま隣にいてくれるクラウドを見る。

クラウドは私の間抜けな表情を少し笑ってから、優しい声を続けてくれた。

 

「…ほとんど子どもたちが作った。俺は2、3ピースしか手伝っていない」

「それがわかんなかったんだよ、なあマリン」

「そう、難しかったの。惜しかったなあ」

「みんな……」

 

胸の中でぷくぷくとはじける、言葉にはできない幸福感。みんなが一生懸命作ってくれたパズルを大事に抱きしめながら必死にお礼を考えるけど、嬉しくって頭が働かず、上手な言葉が出てこない。

 

みんなが、ここで、一緒に暮らしてくれているだけでいい。それだけでいいから、何かしてほしいなんて思ったことがなかったし、思わずとも幸せだった。

だけど、家族が自分を想ってくれているのだと……自分を想って時間を使ってくれたのだと思うと、やっぱり、嬉しくてたまらない。こんなにたくさんのピース、大変だったと思う。星空のパズルなんて、他のものより難しいに決まってる。それなのに、私が星を好きだというだけで躊躇なく選んでくれた、みんなの優しさがここにある。このパズルから確かに、感じる。

 

「……、ありがとう……みんな」

 

元気いっぱいにお礼を言うつもりが、涙声になってしまう。せめて笑顔になろうとしたけど、うまく笑えている自信もない。

だけどそれでも子どもたちは、クラウドは微笑み返してくれる。うまく言葉にできない気持ちを、汲み取ってくれる。

 

「へへ! 喜んでくれてよかった」

「…嬉しいよ、すごく。……嬉しくて涙出てきちゃった」

「な、泣かないでティファ」

「あはは、デンゼル困ってる」

「ごめんね、朝からこんな嬉しいことがあるなんて思わなくて……。…これ、どうしよう。寝室に飾ってもいいかな」

「もちろん!」

「ありがと。……二人とも、飾るの手伝ってくれる?」

「うん! マリン、あれ取ってこよう。クラウドの道具」

「クラウドのおもちゃ箱!」

「…二人とも、気をつけてな」

 

子どもたちが駆け出した先にあるのはおそらく、クラウドの「おもちゃ箱」があるガレージ。その中から、壁にパズルを取り付けるための道具を探しに行ってくれたんだろう。駆けていく背中をありがたく、愛おしく見つめる。

 

クラウドが私の肩をやさしく抱き寄せてくれたのは、子どもたちの姿が見えなくなってからだった。

 

「…、クラウド。……ありがと」

「うん。……ティファも、子どもたちも嬉しそうでよかった」

「嬉しいに決まってるよ……こんなサプライズ」

「…気づかなかったのか?」

「全然。パズル作ってたのは知ってたけど、まさか……」

 

話している最中にもらう、クラウドからのキス。喜びが何十にも重なることに耐えきれなくて、顔はくちゃくちゃになる。

そんな私の髪を優しく何度も撫でながら、クラウドは嬉しそうに苦笑する。どんなに自分が鈍感でも、ここにクラウドの想いがあることがわかるから、私もつられて笑う。

 

クラウドは穏やかに言葉を紡ぐ。どこかで聞いたことのある、あたたかい気持ちを。

 

「……ティファは大変だ」

「…え?」

「…ティファを大好きな人間が、この家に三人もいるんだから」

 

(あ……)

 

まさか貰えると思っていなかった言葉に、愛おしさが溢れる。それ、私のセリフだよ、クラウド。冗談ぽくそう言い返そうと思ったけれど、想像以上に嬉しいみたい。何も言葉が出てこない。笑顔で、頷き返すことしかできない。

 

みんな一緒だ。みんな、一緒だったんだ。家族のことが大好きなのは。いつも大切に想っているのは。

きっと私は、私たちは、それだけを忘れずにいたらいいんだ。誰かのために何かをしたいと思える、大事な大事な気持ちを。

 

 

 

 

 

 

美しい星空を抱えたジグソーパズルは飾られる。私たち家族の手で、私たち家族のために。

どんな曇り空でも、お日様の光を辛いと感じるときでさえも、星空は家族を見守ってくれていた。見失わないように。どこにいてもここに、帰ってこられるように。

 

 

 

Pieces

 

 

 


fin,