「ねえ、これどうやってつけたの?」
朝、自分の胸に咲く赤い跡を指さして、俺のシャツを羽織ったティファが興味津々に聞いてきた。
枕に顔を半分埋めて、目覚めたばかりの頭をぐるぐると動かしながら何も言わずティファを見つめる。
「……」
「ねえ、クラウドってば」
俺が起きる前からベッドから抜け出していたらしいティファは、寝起きの悪い俺と違ってすっかり元気だ。きらきらした目で俺に胸を見せてくる。下着をつけているからとはいえ、いい加減それが刺激的すぎることを覚えて欲しい。
ベッドにもう一度引きずりこもう……なんて別のことを思いながら、ティファにどんな返事をしようか考える。どうやって返事をするのが一番いいのか、考える。
「………何となく」
「あ、ごまかした」
「……口ではうまく説明できない」
もう、と頬を膨らませるティファに手招きをする。近づいてきてくれた彼女の腕を引いて、目標通り彼女を自分の腕の中に引っ張り込む。素直じゃないティファは不機嫌そうな表情をしているけれど、それが「フリ」なのはもうわかってる。
何度も体を重ねておきながら、ティファの柔らかくうつくしい体に跡を残すなんてとんでもない……なんて考えて跡を残すことを遠慮していた俺は、昨夜一瞬で消し飛んだ。自分の中の理由もないルールを破ったことに、特にワケはない。ただ熱い熱い渦の中、隙をついて自分の本能が顔を出しただけ。ティファにしるしをつけたい。ティファを俺のものにしたい。そんな言葉にすればするほど醜い感情が、表に出てしまっただけ。
(……それをどう説明しろと)
「……クラウド」
「…ん?」
「…今までもこれ、つけたことあった?」
「いや……初めてだ」
「…じょ…上手だねぇ」
「……ありがとう」
何の礼だと思いつつ、腕の中で大人しくするティファを見下ろす。ティファは自分の胸をつんつんと突きながら、キスマークを眺めている。……やけに嬉しそうに見えるのはきっと気のせいではない。
「……ティファ」
「ん?」
「…嬉しいものなのか」
「え? あ、えっと……うん」
「……そうか」
こればかりはティファを喜ばせようと思ってつけたものではないから、一緒に喜んでくれることを俺も嬉しく思う。
それならこれから我慢する必要もないかと、ぼんやり考えたときだった。ティファが言葉を続けたのは。
「……なんか、うまく言えないんだけど」
「…?」
「…。…自分だけの体じゃないんだなって、感じがする」
「…………」
微睡の中にいた思考機能が急に起動する。爆弾発言をしたティファ本人はこちらの様子なんて知るはずもなく、一人で赤くなって俺の胸に顔を埋めている。
ティファを見つめる。こんな、いい朝には似合わないどろどろした独占欲が溢れ出す。いつもそうだ。ティファは力を持っている自覚がない。簡単に、無意識に俺を手のひらの上で転がしてしまう。
「……」
「…ん、…クラウド? …………あ」
「……」
「ちょ、つ、つけたでしょ」
「……嬉しいって言ったから」
「でもこんな…首につけたら見えちゃうよ…」
「…何かで隠してくれ。……隠さなくてもいいけど」
「隠します。もー…言う方は簡単なんだから…」
ごめんごめん。心のこもっていない謝罪をしてティファを抱きしめ直す。
なぜなら俺は気づいてる。ティファはそんな風に口を尖らせながら本当は嫌だと思っていないことぐらい。
「……」
腕の中、首筋に触れ目を伏せて、頬を赤らめるうつくしい人を俺は見つめていた。
触れてはいけない人に、触れていいよと言われる幸福を、ただ噛み締めながら。
Mine
(とじこめてよ、)
fin,