「クラウド、たすけて」

 

夜の11時。ほんとはもう寝てる時間に、シャワー後頭を拭いていたクラウドのところに私は助けを求めてやってきた。

いっしょうけんめい一階を指差す私に、首を傾げながらしゃがみこんでくれたクラウド。私はそんなヒーローに伝える。……ティファがお店で寝ちゃっているという困りごとを。

 

「起こしても起きないの」

 

私がティファを見つけたきっかけは、おやすみを言いに寝室に行ったこと。そこに誰もいなくていろんなところを探していたときに、お酒を飲んじゃったのか、一階のソファー席ですやすや眠っているティファを発見した。

 

何度か声をかけたり、とんとんと背中を突いてみたけれどティファは全然起きる気配がない。このままだと風邪をひいちゃう。どうしようかと考えたとき、真っ先に思い浮かんだのがクラウドだった。

 

「それは困ったな」

 

助けを求める私に、クラウドは優しく微笑んでから頭を撫でる。それをみて私はほっとする。クラウドはいつだって、大きくてあったかい手で困ったことを解決してくれるから。

 

その大きな手にひかれ、ふたりで一緒にもう一度降りる一階。ティファは変わらず気持ちよさそうにテーブルにつっぷして眠っていた。

 

「ね?」

「ああ」

 

ふたりで微笑みあってからティファに近づく。

クラウドはどこか嬉しそうにしながら、何度か優しくティファの体を揺する。きっとティファのことをかわいいって思ってるんだろう。その横顔は「困ったな」っていうお顔じゃない。

 

でも、しっかり夢の中にいるティファは、クラウドが呼びかけても、さっきと一緒でむにゃむにゃ寝言を言って起きる気配はなかった。

 

「…ティファ」

「……んー…」

「ちゃんとベッドで寝よう。風邪をひく」

「んん〜……」

 

体をかがめて、クラウドがティファの耳元に囁く。だけどティファはにこにこするだけ。

体を起こしたクラウドはわざとらしくため息をついてから、悪戯っぽい表情で私を見下ろした。

 

「…だめだな」

「だめでしょ?」

「ああ。……困った人だ」

 

(あ……)

 

全然思っていないくせにそんなことを呟いて、クラウドはティファを抱き起こし、そのままお姫様抱っこで持ち上げる。あったかくて安心したのか、クラウドの胸に頬を擦り寄せて、ティファも幸せそうにため息をついた。

 

クラウドは、そんなティファを見つめる。大切に大切に、抱きしめる。落っことしたりしないように。壊してしまわないように。

 

(……)

 

「…クラウド」

「…ん?」

「クラウド、すっごく嬉しそう」

 

トートツな私の言葉にきょとんとすることもなく、クラウドはただティファを見つめながら微笑んだ。

 

「…宝物だからな」

 

(……わあ)

 

ティファ。ねえ、ティファ。今の聞こえた? 宝物だって。大切なんだって。夢の中にいても起きていても、今の言葉が聞こえていたらいいのにな。クラウドの気持ちが、届いていたらいいのにな。

 

(きっとね、きっと)

 

クラウドって、ティファが思ってるより、もっと。

 

 

 

ひとりでほっぺを赤くする私には気づかないまま、クラウドがティファを寝室に運ぶために足を進める。

私も、クラウドの後ろをついて歩いた。まだティファを見つめているその人の、大きな大きな背中を見つめながら。

 

 

 

ふたり

 

(それが世界)

 

 

 

 


fin,