行きたくない、仕事に行きたくないと、未だ微睡の中にいるティファの胸に顔を埋めた午前四時。
今朝は冷え込むと、昨夜ラジオから流れる天気予報で聞いていたから、余計ベッドから出るのが億劫だ。わざわざ文句は言わないが、寒い日のフェンリル移動はなかなか堪える。
時計を再度確認するまでもない。あと一時間もしたら俺はこの寒さの中荷物を受け取りに走らなければならない。この場所を抜けて。ティファの側から離れて。
「……」
「…ん……?」
「……」
「…なあに、くらうど……まだねむいよ…」
あまりにつよく抱きしめていたら、ティファが半分寝ぼけたまま苦しそうな声を出す。申し訳ないとは思いつつ腕の力を緩めることはできない。……ティファから離れたくない。
「……ティファ」
「ん……?」
「…ティファ」
「……んー…」
ティファという名前に色々な感情を込めて呟く。ティファは大きく息をついてから、やわやわと頭を撫でてくれた。このまま胸の中で二度寝することができるならどれだけ幸せだろうと、瞼を閉じながら思う。
「………」
「……」
「………ん? …クラウド、おしごと?」
「……」
「……クラウドさーん」
「………うん」
「今日は早いんだね……外、寒そうだねえ」
「……出たくない」
「ふふ……」
結局目を覚ましてくれたらしいティファが、俺の頭を抱きしめながらおかしそうに笑う。このままティファが背中にでもくっついてきてくれたなら、俺は何時でもどこへでも行けるのにと馬鹿なことを考える。
五分、十分と時間は過ぎていく。今日ティファの側にいられる時間がどんどんなくなっていく。
巻き戻せたらいいのに。この時間の中に閉じ込められるのであれば、俺は喜んでその牢屋に身を投じるのに。
「……ティファ」
「ん…?」
「………おはよう」
「うん、おはよ」
「……おはよう」
「…もう言ったよ?」
「うん……」
「…起きたくないから、現実逃避?」
「……現実逃避」
困ったなあと、ティファが上機嫌にため息をつく。それでも頭を撫で続けてくれる手の、ティファの優しさに俺もため息をつく。
「…かぜ、引かないでね」
額の髪を分けてから落としてくれる口付け。解かれていく時間。
見返りを求めず愛情をくれる人のために、やはり俺は行かなくちゃいけない。この人を守るために、ティファに笑顔でいてもらうために。
「………すぐ帰る」
頼まれてもいないのにそう呟く俺に、ティファはありがとうと返してくれる。そして今度は頭のてっぺんにキスを送る。
俺はただ、その少し冷えた頬に頬ずりした。
ティファの肌は柔らかかった。
生きているから。ここにいるから。
ここは箱庭
(ときはとどまる)
fin,