たくさんの言葉を使いながら、私はクラウドを寝床に誘う。

 

一人だと寒いの。心細いの。怖い夢を見たの。クラウドにこっちにきてもらう理由は何だっていい。きっとクラウドにとってもそれは重要ではない。必要なのは、理由があること。仕方がなかったのだと言い訳できること。

 

バレットたちが近くで眠る中、テントの中で二人きりになる。

 

クラウドは私の寝床に潜り込み、私のからだを抱き寄せながら耳元で囁く。寒くないか。怖くはないか。もう大丈夫か。かけてくれるのは彼の優しさ。だけど私が求めているのは優しさのその先の熱さ。クラウドはそれをわかっていて一枚紳士な態度を挟む。

 

間違っていたとき、この関係を傷つけるのが怖いから。間違っていたとき、自分たちが元に戻れなくなることを恐れているから。

 

「……うん、大丈夫」

 

できるだけ甘い声で、できるだけゆっくりと、クラウドの目を上目遣いで見つめながら返事をする。大丈夫だと応えたあとも、クラウドが私から目を離さずにいることをじっと確かめる。文字通り彼と私は、目と鼻の先の距離。

 

クラウドの視線が下に逸れる。彼が欲しがるのは唇。私もみじろぎをする。いつだっていいの、好きなタイミングでいいのと伝えたくて、伝わって欲しくてクラウドに体を寄せる。

 

衣服越しに重なる胸。互いに感じる吐息の温度。息の音さえ聞こえる距離で、私たちは酸素を求める魚のように唇をパクパクとさせる。どちらからするのか、どちらから踏み外すのか、ぎりぎりの時間までその権利を譲り合う。

 

唇の皮膚が重なるまで。口内の温度が、混ざり合うまで。

 

「……、ん…」

 

クラウドがあげてくれた白旗に気持ちよく乗っかって、私はようやくこの目を閉じた。我慢の限界とばかりに、深く深く入り込んでくるクラウドを受け入れながら、その首に両腕をまわす。一度こうやって、どちらかの船に乗ってしまえばあとは一緒。さいごまでいっしょに進むだけ。恥ずかしさと罪悪感という重荷を一度海底に沈めて、私たちだけでこの海を進むだけ。

 

 

 

 

 

 

 

旅の途中で明かされた私たちの想いは、とうていすぐ結ばれるべきものではなかった。全てのことを手放して、両手をあげて駆け寄り抱きしめ合うことができるほど、甘い世界で生まれた絆ではなかった。

 

私には後悔があった。それは自分の命を軽く思ってしまうほどの痛い罪。クラウドにも後悔があった。大切な人たちが命懸けで繋いでくれた命だからこそ、幸せをこのまま進んでいいのかという恐怖。その二つはとても似ていた。だけどどちらも互いに交換することもできなければ、どちらかが肩代わりすることもできない複雑な闇。私には私の、クラウドにはクラウドの、乗り越えるべき壁がある。見つめるべき現実がある。必ず向き合い続けなければならない、過去というものがある。

 

だからこそ、私たちは重なり合う。わざと大きく遠回りをして、二人で手を繋ぎよろよろと走る。

まっすぐ走れるようになるまで、どちらかに寄りかかって道を進む。自分の足で立てるようになるまで、互いに甘える方法を学ぶ。

 

いけないことをしている「ふり」をして、別の甘い罪悪感を植え付けていく。

 

 

 

 

 

 

 

「…、……クラウド…」

「…ティファ……」

「ん……」

「……いいか…?」

「…うん。……服、脱がさないで…」

「…わかってる。……ティファも声、我慢して」

「……うん」

「…ごめんな」

「ん……」

 

ずしりと覆い被さってくるクラウドの重い身体。首元を熱い舌で舐められながら、ごそごそと彼を受け入れるための準備は進む。クラウドは多分わざと謝る。悪いのは自分の方だという証拠を残すために。そしてきっと私も、わざとそれに乗じる。私が罪悪感を抱くことの方が、クラウドを苦しめることをどこかで学んでしまったから。罪を譲り合わないと、二人で一緒に沈んでしまうことを、私たちの直感は知っているから。

 

「…っ…!」

 

布越しに、背中に腕をまわし抱き寄せて、クラウドを体の中に受け入れる。私たちは繋がる。きっとどの場所よりも素直に、どの場所よりも貪欲に。好きだとか愛してるとか、その類の言葉は遠い未来の自分達になすりつけて、ただ純粋に目の前の人を求める。

 

「……、ティファ…」

 

ひとつに重なった二人の体を、欲望のままに揺らしながら……クラウドは絶対に、私を抱く腕の力を緩めることはしなかった。だから私は悲しまずにいられた。今このとき、独りぼっちではないことを、クラウドはその体温を持って伝えようとしてくれていたから。言葉以外の方法を、私たちは二人で望んだのだから。

 

 

 

 毒をふたつに分けて飲む

 

 

 

(綺麗に二等分すればいいと、

  最後まで信じていたのは、どっち)

 

 


fin,