今日は仕事を頑張ったからと、そんな理由をつけられて、私は今夜もクラウドに抱きしめられる。理由があろうとなかろうと、私がクラウドの誘いを断ることなんて滅多にないのに、クラウドはよく私をはだかにするのに理由をつける。

 

いつもよりちょっと荷物の量が多かったから。いつもより走行距離が長かったから。泊まりの出張が続いてろくに触れられなかったから。珍しく人助けをしたから。お昼ご飯を食べていたときふと私を思い出したから。寂しくなったから。今日私とちゃんと話をしてない気がするから。目が一度も合ってないから。エトセトラエトセトラ。

 

色んなところにキスをしながらクラウドがくれるその理由は、中身がちゃんとあるときと、よくよく考えたら意味不明なものと、両極端。無理矢理考えたんだろうなあと思うときもあるし、切羽詰まっている様子のときもある。どっちにしたって嬉しいことに変わりないから、私はそのクオリティの変動する理由たちに「不合格」をつけることなく、全部受け止めてしまうのだけれど。

 

 

 

「………、」

 

油断したらすぐに溢れそうな声を、息を外に大袈裟に漏らすことで我慢する。クラウドは私の様子を伺いながら、ふわふわと、時にきゅっと、私のからだを触っていく。触れられた私の肌はその部分だけ熱くなって、もう一度触れてほしいとクラウドを呼ぶ。

 

「…ティファ」

「……?」

「…声出して」

「や……やだ」

「どうして」

「恥ずかしい……」

「…恥ずかしくない。俺しか聞いてないから」

 

クラウドしか聞いてないから恥ずかしいんでしょう。文句を心の中で呟きながら、私を見下ろす彼を上目で見上げる。クラウドは余裕を保っているように見えるけど、その眼はもうとっぷり熱の中に浸かり、そのまま私を捉えていた。

 

(……)

 

醸し出される普段とは違う色気に、ひとりクラクラする。クラウドはきっと気づいてない。自分が今どんな顔してるのか、どれほど魅惑的な表情をしているのか。

「今日は仕事を多くこなした」からご褒美が欲しいと、シャワーを浴び終えた私にお願いしにきたときはこんな顔してなかったのに。「しょうがないなあ」と言いたくなるぐらいのかわいい顔しか、してなかったのに。

 

(……どっちが本物なんだろ)

 

「……っ、ん」

「…ティファ」

「……、……ん、クラウド」

「……ティファかわいい」

「え…? も、もう……変なこと言わない、で」

「…変なことは言ってない」

「……意地悪してる、でしょ…」

「…ちょっとだけ」

 

赤く腫れた場所に指で触れ、器用に私を気持ちよくさせながら、クラウドが楽しそうに笑う。私の余裕がどんどん無くなっていくのと一緒に、クラウドはますます顔をとろんとさせていく。よくしてもらってるのは私の方なのに、私よりずっと……気持ちよさそう。

 

「…、クラウド」

「……?」

「…嬉しそう、だね」

「……ご褒美だからな」

「ふふ…。…ご褒美じゃなくても、いいのに」

「…?」

「……別に理由、なくてもいいんだよ…」

 

なんの理由? それは説明しなくたってクラウドには伝わる。いつだって理由を用意してくれる張本人だから。

クラウドは私の言葉に一瞬きょとんとしてから、何故か少しだけ不機嫌な表情をする。どうやら不服なことがあったらしい。

 

「……それはだめだ」

「ええ…?」

「…、俺にとってティファは………」

「…私は?」

「……。いや…説明することじゃないな」

「…説明して欲しいな」

「……嫌だ。聞いたらきっと笑う」

「ふふ…笑わないよ」

「……もう笑ってる」

「これはその……、ん」

 

言葉を遮るように重ねられる唇。優しくてあたたかい口付けは、これ以上は聞かないでという答えの代わり。

キスでさえも私を気持ちよくさせようとしてくれるクラウド。さっき何を言いかけたか、私は少しわかったような気がした。クラウドにはきっと理由が必要なんだろう。私に触れるのに。私を求めてくれるのに。

 

(……別に、いいのにな)

 

「触れたい」っていうことだけで、十分……理由になるのにな。

 

「…ん、…ねえ、クラウド…」

「……」

「…いいんだよ」

「……、」

「…私……、嬉しいから……何だって、いいから…」

 

あえて言葉足らずを許して、私はクラウドに思いを伝える。難しくっても知っていて欲しくて、言葉にできることを言葉にする。クラウドの優しさが嬉しい。クラウドの想いが嬉しい。だから……だからこそ、私は優しくないクラウドさえ欲しくなってしまう。知りたいと思ってしまう。

 

なんていう、わがまま。こんなにも沢山のご褒美をもらっておきながら、私は。

 

(…それでも、わかってても)

 

 

 

 

クラウドは返事をしないまま、丁寧に私の喉にキスマークを残した。

 

許してくれる? 私たちは私たちに触れながら、跡を残しながら確かめ合った。

わがままの加減を。奥底に眠る欲望を。

 

 

 

デストロイ

 

 


fin,