「……もう、一週間になっちゃった」
夢でも見ているかのように、うっとりとティファが呟いた。それは、うつぶせになっている、何も纏わない細く柔らかな体に、俺がシーツをかけたとき。
「…何が?」
「ん……ないしょ」
「…教えて、ティファ」
「あ、……だめ、耳弱いから」
「知ってる」
「もう……、…わからない?」
行為のあとにしか聞くことができない、特別に甘いティファの声。夜中独特の気だるさも消えていく。
教えてほしい。追い打ちをかけるように耳元で呟き、ついで頬に口づけると、ティファは観念したように口を開いた。
「……、…これ……するの」
「…これ?」
「……クラウドと」
「…………ああ。……セックス」
「う……うん」
「……。そんなになるか?」
「…そうだよ。……毎日だもの」
「……」
毎日、と具体的な間隔を指摘されて言葉に詰まる。
意識していなかったが、言われてみればそうだった。エッジでの自分達の住む場所が整ってから、今日でまる七日。つまり、家ができてから毎日、俺たちはどこかで抱き合っているということになる。
「……ごめん。流石に辛いよな」
申し訳ない気持ちがようやく出てきて、ティファの額にキスをする。ティファはやはり俺を見つめ続けていたけれど、その目は俺を非難するようなものではなかった。
「…ううん。私は……平気」
「…無理してないか? 嫌なら嫌と言っていい」
「大丈夫。……大丈夫なんだけど」
「?」
「…クラウド、すごいなと思って。その……つ、尽きないから」
「……」
「……」
何が「尽きない」のか問い直す必要はなかった。自覚はある。毎晩飽きることなく、自分が何を求めているのか。ティファが「すごい」と言う気持ちもわかる。自分でも最近の、あまりの節操のなさに驚くほどだから。
まるで、我慢する方法を教わってこなかった犬だ。触れるだけじゃ物足りずいつも最後まで求めてしまう。キスをしはじめたらもうだめだ。ティファは優しいから、ティファが受け入れてくれるから、それをいいことに隅々まで味わいつくしてしまう。
今日したら明日は休もう。これが終わったら繋がりたい欲も落ち着くだろう。そんな楽観的な展望は毎度ことごとく打ち砕かれる。
ティファを前にすると。ティファの温もりを、1秒でも思い出してしまうと。
「……クラウド、今までどうしてたの?」
「え?」
視線を感じ目線をおろせば、ティファは頬を赤らめつつ、じっと俺を見つめていた。その目には好奇心がいっぱいに詰まっている。
「その……私とこういうこと、するまで」
「……。どうしてたんだろうな」
「…誤魔化してる?」
「いや……。…自分でも信じられないんだ……ティファを前にして、今まで我慢できていたのが」
「……。…男の人は大変だって聞く」
「…誰に聞いた?」
「い、一般知識です」
「ふ……ごめん」
「…間違ってた?」
「……間違ってはない」
ティファがその野暮な知識をどこで、どのタイミングで仕入れたのかが気になるが、あまり詮索はしないでおく。恥ずかしがるティファはかわいいけれど、あまりやりすぎるとかわいそうだ。
今まで一体どうしていたのか。その問いへの最適な答えを探りながら俺もシーツの中に入り、ティファのあたたかな胸に顔を埋める。ふくらみに口づけ、その肌を軽く吸い上げると、俺が「一週間前」から咲かせ続けている跡がまた一つ増えた。
「……」
独占欲の証でもある、胸に咲く数々の鬱血痕を指でなぞる。統一感なく散らばる赤い跡は、過去の自分と今の自分が、変わらず貪欲にティファを求めていることを俺に証明していた。
(……やっぱり、犬だな)
「…尻尾が見える」
「え?」
「あ……いや。何でもない」
「?」
「……。今まで、我慢できていたんじゃなくて、単に、知らなかったからだと思う」
「…知らなかった?」
「…うん。ティファと繋がるのが、こんなに気持ちいいこと」
「! も、もう……」
「…それと」
「……?」
「こんなに……幸せなこと」
「……、クラウド」
ティファが、わかりやすく嬉しそうな顔をする。隠しきれていない笑顔が愛おしくて、ついにやけたまま見惚れていると、ティファはごまかすように目を逸らした。
(……かわいい)
「ティファ……」
「ん……、だから耳だめ、」
「…俺には、ここがいい、に聞こえる」
「……都合のいい耳だね」
「…間違ってたら謝るよ」
「……。意地悪」
安心して愛撫を続けられるのは、言葉とは裏葉にティファの機嫌のいい声が聞こえるから。眠気が来るまで、時間が来るまで、途絶えることのないティファを欲する欲望。これは何欲と呼ぶべきなんだろう。性欲? 食欲? それとももっと奥深い、人間の持つ根本的な欲?
「……、ふふ、」
「…ん?」
「……ううん。なんでもない」
「…嬉しそうだ」
「…うん。嬉しいの」
ようやく辿り着いたまっすぐな正解に、俺たちは笑い合う。幸せは連鎖する。連鎖させることを諦めなければ、きっと。
真夜中、決して立派とは言えない小さな部屋に、俺たちの吐息と笑い声だけが響いた。朝にかけてそれは小さくなるけれど、二人がここにいる限り、途絶えることはなかった。
コミュニケイト
(もっと教えて、)
fin,