失言は、それが失言だと気づいたときには大体もう遅い。

さっきまで頭上で響いていた、ドライヤーの音とティファの鼻歌の代わりに聞こえた「もう終わりか」の声を自分の声だと認識したのも、手遅れになってからだった。

 

「……あ」

 

本音が漏れたと言えばそれまでだ。実は俺がティファに髪を乾かしてもらうのが好きで、たまにわざと髪を乾かさないまま廊下を彷徨いているという、ティファには秘密の事実が露呈したに過ぎない。

恐る恐る振り返った先のティファの頬がこれでもかというくらい緩まっているのも、その隠し事がティファに若干ばれたということに他ならない。

 

「…今なんて?」

「……忘れてくれ」

「もう終わりかって言った?」

「…気のせいだ」

 

よくよく考えれば隠すことでもない秘密を、何となく認めづらくなり無駄な抵抗を続ける。

 

これで納得してもらえるわけもなく、ティファはそっぽを向いた俺の肩に後ろから顎をのせ、上機嫌に顔を覗き込んだ。

 

「……クラウド」

「……」

「…もっとゆっくり乾かせばよかったね」

「…何の話だ」

「もう、照れないで」

 

嬉しそうなティファの声を耳元で聴きながら、背中側から前にまわしてくれたティファの腕に触れる。今更素直になる方法なんて知らないから、無言のままティファの方に顔を向けると、ティファはよほど楽しいのか小さく音を立て唇を重ねてくれた。

 

「……。…満足か?」

「…クラウドは? ……もっと触ってて欲しい?」

 

その問いに、首を横に振ることができるほどのプライドは生憎持ち合わせていないから、間髪入れずに素直に頷く。どちらからともなく始まるキスの合間に、ティファが指を俺の首筋に這わす。

そんな、いつまで経っても甘いティファを味わいながら俺は悩みはじめていた。次からどうやって髪を乾かしてほしいことをアピールすればいいのかなんていう、情けなくも大切な日常のこれからを。

 

 

 

ボロは出るけど受け止めて

 

 

 


fin,