やられた、と思った。

 

大きくため息をつく私の目の前にいるのは、机に突っ伏してびくともしないクラウド。その周りにはあまりクラウドとセットで見ることのない、からっぽのグラス、ビン、ボトル。

 

わかってる。数時間前、仕事から疲れた様子で帰ってきたクラウドが、どういう経緯かわからないけれど酔っぱらった常連さんたちに捕まってお酒を浴びせられてたことは。今日は特別お店が繁盛していたから、つい仲裁できないまま終わってしまった結果がこれなんだけど。

 

 

「クラウド、ごめんね……大丈夫?」

「…、ん……」

 

 

よくしっかりしてるなあと思うけど、クラウドは滅多に酔っ払わない。バレットほど酒好きというわけではなさそうな彼は、いつも程々のところでお酒を止めている。そして大体、私と一緒に、バレットやシドが荒らした現場の後片付けをする役目に回る。お店を構えて仕事を始めてからはとくにそう。だから、こういう光景はかなり珍しい。

 

さすがにクラウドを支えて上のベッドまで行くのは無理だな。ブランケットでも持ってくるかな。

そんなことを考えながらクラウドの背中を気持ち程度にさすっていると、クラウドが重そうな頭をゆっくりとあげた。それからほとんど開いてない目で、私を見る。

 

 

「クラウド」

「………ティファ……だいじょうぶか…」

「え?私は大丈夫だけど……」

「なら……いい……」

 

 

私の様子を確認してから、そう言い残してまた机にへたれこむクラウド。

 

どうやら、何かから私を守ったと思っているらしい。もしくは…私が気づいていないだけで、本当に何かから…もしかするとお客さんから守ってくれたのかもしれない。

 

 

(……)

 

 

彼にかろうじて意識があるのをいいことに、私は目の前でダウンするヒーローに質問をしてみる。

 

 

「…クラウド、守ってくれたの?」

「………うん」

「何から?」

「……きゃく…」

「……。…それで、こんなにお酒飲んじゃったの?」

「……てぃふぁに、飲ますっていうから………かわりに…」

「そ…そうだったんだ」

「…ティファが……ぶじなら……いい」

「……」

 

 

(……。ど、どうしよう……)

 

 

明らかに無事じゃないクラウドを前に、私はついにやにやしてしまっていた。それから顔を隠すために両手で顔を覆う。だってこれはいわゆる、不謹慎というやつだ。

 

だけど嬉しくて。女々しいかもしれないけれど、思ってもいないところで……こんなところでまで守ってもらえていたことが嬉しくて。

 

何だか嬉しさと申し訳なさでどうしようもなくなって、私はクラウドの頭を撫でる。クラウドは少しだけ目を開けて、気持ちよさそうな表情で私を見る。

 

 

「…ありがとう、クラウド」

「……きにするな…」

「……」

「おれが……ティファをまも……る」

「…うん。いつも守ってくれるね」

「あたり……まえだ……だいじな………」

 

 

その辺りまで頑張って言葉を紡いだかと思ったら、クラウドは完全にまた意識を手放した。さながら、強敵と戦ってそのままばたりと倒れるヒーローだ。私のクラウド補正がかかっていることは、認めます。

 

 

「…もう」

 

 

おかしいでしょう。みんなが指指して笑っちゃうようなクラウドのかわいいところも、私はかっこいいなあなんて思ってしまうんだよ。…私が何の病にかかっているかはどうか聞かないでいて。

 

 

私をヒロインにしてくれてありがとう。

 

そんな思いを込めてそっと、熱のこもったそのおでこにキスをした。

眠ったままだけど、クラウドの表情が少し和らいだような気がした。

 

 

 

ベイビー、マイプリンス

 

 

 

 


fin,