いまだに不思議な気持ちになるの。クラウドと、はだかで抱き合うこと。
お互い何も纏わない状態になってから、ぎゅうと抱きしめ合う体。固くて厚いけど、表面は少しだけ柔らかいクラウドの肌が自分を包む。胸と胸が重なって、きゅっと一瞬、圧迫される肺。その苦しくも心地いい感覚に、恥ずかしくて閉じていた目をそっと開くと、視界には真っ暗な天井が映った。
「……」
「……」
甘くて熱い行為の最中、ふわりとその瞬間は訪れる。ふたり衣服を剥がし合い、生まれたときの姿になって、寒さを誤魔化すように抱きしめ合うこの瞬間。夜のクラウドが持つ色気とか、男らしさとか、そういうものに胸をどきどきとさせている時間とは少し、違う。ある意味で男も女も関係ない。触れ合う肌と肌の心地よさに、気持ちがふと柔らかくなる。これは……そう。赤ちゃんが、母親に抱く安堵のような。
「…、ふう……」
「……ティファ?」
「ん……?」
「…平気か?」
「あ……ごめんね。平気だよ」
突然ため息をついてしまったから、不安に思ったのだろう。クラウドは重なっていた体を少し起こして、私の顔を覗き込む。予期せず目の前に現れた、クラウドの綺麗な顔にどきりとしたけれど、優しく頬を撫でられる感覚に、心はじんわり絆された。
「……、気持ちよくて」
「……え?」
「クラウドと、こうするの……。……あ」
ぽつりと思わず漏らす本音。目をぱちくりとさせて固まるクラウドを見て、自分が恥ずかしいことを口走った事実に気づく。
「えっと、その……違うのクラウド」
「……」
「その、そういう意味じゃなくて……裸でぎゅってするのが、気持ちいいってことで……」
「…ティファ」
「で、でも、もちろん、そういう意味でも気持ちよくて……わ、私何言ってるんだろ」
「……、ふ」
「…う。いま笑ったでしょ」
「…ごめん。ティファがあまりにも可愛くて」
ひとり、あたふたと焦る私を、クラウドは心底嬉しそうに見つめる。恥ずかしくて顔がぽぽぽと赤くなるのがわかる。だけど、クラウドに宥めるようなキスをもらいながら、私はようやく呼吸を整えていく。
(……、)
すっと落ちる影。私の顔の両脇に肘をついて、こちらを見下ろすクラウドが……かっこよくないわけもなく。
ずるいなあ。この人は、私が欲しいものを何でも用意してみせるのだから。
「……嬉しいな」
「なにが……?」
「…ティファもこれを、気持ちいいと思ってくれていることが」
「は、恥ずかしいよ」
「どうして。ティファが言い出したことなのに」
「そうだけど……」
クラウドは、私を半分揶揄いながらも、どこか真面目に喜んでいるように見えた。恥ずかしがる必要なんかないと、穏やかな瞳が告げている。その目に見つめられるうちに段々、恥ずかしがることが恥ずかしいような気がしてきた。
(……)
「……。クラウド」
両腕をゆっくり持ち上げて、クラウドの首に絡ませる。それは照れ屋な自分の合図。私の扱いが誰よりも上手なクラウドは、すぐに察してキスをくれた。
クラウドのあたたかい手のひらが、ベッドと私の背中の間に差し込まれる。ゆっくり、慎重に預けてくれる彼の体の重さに……私はまた苦しさと、何ともいえない充実感を覚える。
守られているようだと、言えばいいのだろうか。それとも、守っているような気持ちでいるのか。
私にとってこの時間は、きっと……死ぬ間際に思い出せるような、そんな。
(クラウドがどう思っているかは、わからないけれど)
「……ティファ」
すぐ耳元で囁かれる、小さな声。両手がまわりきらないほど広い背中をゆっくり撫でおろすと、クラウドもそれに合わせて深呼吸をする。
そろそろ、優しいクラウドにも限界がきただろうか。熱い時間の急な中断は、私がよくやる我儘のひとつ。一度も文句を言われたことはないけれど、いろいろと苦しいことは、彼の体温の少しの上昇が教えてくれるから。
待たせてごめんね。もういいよ。そういう意味を込めて、柔らかな頬に慣れないキスをすると、クラウドはまたそっと頭を持ち上げ、私の瞳を覗いてみせた。
「……。まいったな」
「……?」
「…感情がまとまらない」
「…どういうこと?」
「…続きをしたい自分と、このまま眠りたい自分がいる」
「ふふ……」
「…俺は贅沢者だな」
「……うん。私たち、贅沢だね」
何を言わんとしているかを察して、私たちは鼻をくっつけ笑いあう。ほんとうに、贅沢だ。何よりも贅沢なのは、どちらを選ぶのか、自分たちで決められること。二人で選んだ道なら、どんな道も決して「間違い」にならないことを……知っていること。
あたたかくも甘い時間。いったいどのルートを辿って眠りについたのかは、私たちだけの秘密。
クラウドの肌は、優しかった。私はこの夜何度も何度も、呼吸する喜びを味わった。
A nude
fin,