ほー。
こいつも人並みに妬いたりすんのかと、オレを間に挟んでぎゃーすか珍しく小競り合いをするクラウドとティファを見て、歩きながら思った。
「クラウド、いくらなんでもさっきの冷たいと思う」
「……。ティファが誰にでも優しくしすぎなだけだ」
「でも、困ってたじゃない。もうちょっと、話ぐらい聞いてあげようよ」
「誰もかも助けてたら進めないだろ」
「ふーん、そういうこと言うんだ。クラウドってそんなに冷たかったんだ」
「ティファ、俺はただ……」
滅多に怒ったりしないティファにそっぽを向かれたクラウドが、明らかに慌てた表情を見せる。
ほー。冷たいやつって思われるのは不服なのかよ。こんだけ駄々こねといて、よくそういう顔できるぜ。
不機嫌そうな顔のままティファがオレに話を振る。
ねえバレットひどいよねと、ぷりぷりするティファは、クラウドが「冷たい態度」を取った真意に気づいていなさそうだった。こういうところはさすがにクラウドに同情する。
「…いつもは誰でも助けてるじゃない。何でも屋さんしてたときだってそうだったじゃない」
「……」
「……。ネコ探しだってしたじゃない…」
「あれは本当に困ってたから……あと仕事の一環だった」
「…クラウドのケチ」
「……」
「さっきの人も本当に困ってるように見えたよ? きっとお礼もしてくれたよ、優しそうだったし」
「やさ……。……別に、礼がほしくてやってるわけじゃない」
「…ケチ」
「……」
ケチ、と言われるたびにクラウドがしかめっ面をする。言い返したくても言い返せないときの顔だ。オレはその不細工で不機嫌な顔を見ながら、笑いてえのを堪えつつ二人が喧嘩している理由を思い返す。
ことの発端は、道中ちょっと立ち寄った店で、その店主がオレたちに声をかけてきたことだった。その男はオレたちの見てくれが明らかに強そうだということで、店の周りに最近現れるモンスター退治を頼んできた。最初はクラウドも、特に拒否する素振りも見せず男の話を聞いていた。
そう、そこまではよかったんだ。問題はこっからだ。男が話を聞くクラウドの後ろでヒョコヒョコしていたティファに気づいたあたりから、明らかに奴の言動がおかしくなりはじめた。
モンスター退治をしている間「そこの女性は危ないから店に置いて行け」とか「こんな綺麗な女性が旅しているのか、かわいそうだ」とかティファを褒めてんのかオレらをけなしてんのかわかんねえことを言い始めたあたりで、クラウドの機嫌が明らかに悪くなった。
そっからの話は早かった。クラウドが急にそいつの話の腰を折って「他を当たれ」と踵を返し店を出て行った。オレらも、一応リーダーの言うことにゃ従わなきゃなんねーっつーことで、店を出た。……そんで、ティファとの喧嘩に至るわけだ。
(……まあ、気に食わねえだろうな)
「……ティファは」
どうすんだろうなとクラウドを観察していたら、奴は不機嫌な顔丸出しのまま口を開く。なんだかんだ優しいティファはちゃんとクラウドの声に耳を傾ける。
「…。……もっとああいうのに気をつけたほうがいい」
「ああいうの?」
「……ああいうのだ」
「…どういうの?」
「……。バレット」
「っておい、そこでオレかよ」
「何、バレットもわかってるの?」
「オレは知らねえよ? クラウドさん悪い、オレにはさっぱりわかんねえ」
「……」
わざとらしく言ってみせる。クラウドがじろりとこっちを睨み上げているのがわかる。
しーらね、オレは何にも知らねえぞ。お前がなんで怒ってんのか、わかるけどオレは知らねえ。ティファとさっきの男に対して、オレが抱く感情じゃねえ感情を抱いているお前のことなんて、オレはこれっぽっちもわかんねえ。
そう、わかんねえ。わかんねえけど……お前のそういうところは、まあ嫌いじゃねえ。
「…まー、あれだ、ティファ」
「?」
「あの男がティファの強さを見抜けなかったって話だ」
「え? ……よくわからない」
「だからよ、あいつがやたらティファをカヨワイ女扱いすっから、こいつは思ったわけだ。ティファの何がわかるってな」
「…そうなの?」
「…………そういうことでいい」
「ほーらよ、こういうことだよティファ」
「…ふーん」
なんっつー、ナイスフォローだ。我ながら完璧だ。今晩はぜってー酒奢ってもらうからなクラウド。
横目で見た右側のティファは、心なしか嬉しそうな顔でそっぽを向いていた。
左側のクラウドは、拗ねたガキみてえな顔したまま同じくそっぽを向いていた。
(あー……)
めんどくせえなあ。適当にそんなことを心ん中で呟き、声なく笑いながら、オレは二人の間を歩く。
めんどくせえけど悪くねえなと思った。
どうでもいい時間は、どうでもいい時間ではなかった。
ジェットコースターは秒速5ミリ
(ああ、めんどくさいなあ)
fin,