俺を見つめるティファの機嫌がやたらといい理由を、ティファを見つめながら探っていた。熱が溜まったベッドの上、身なりも整えないまま乱暴に抱き合って横になる、ふたりだけの深夜1時。

 

「…へへ」

 

ぺたぺたとティファの細い指が俺の頬に触れる。その指は額に移動し、鼻を触り、性的な意味を持たないまま唇に移動する。ティファは俺に愛おしげに触れている……というわけではなく、輪郭をなぞって確かめて、俺の質感を楽しんでいるように見えた。

 

「……」

「…ティファ」

「ん?」

「…俺の顔に何かついてるか」

「ううん。……その逆、かな」

「逆?」

「……ないしょ」

 

ないしょ? ティファの言葉の意図を読めないまま首を傾げる。逆とは。……顔に何もついていないのならそれはそれで困る。

ティファは自分の放った言葉にはあまり興味を示さず、今度は手のひらを俺の頬に優しく添える。こちらを見つめる目がどうもうっとりしているように見えるのは、単なる自惚れなのか、それとも本当に。

 

「……あ。目、逸らした」

「……。慣れてないんだ」

「いつも、見てくれてるじゃない」

「…ティファを見つめるのは好きでも、見つめられるのは別の話だ」

「ふふ……」

 

知らない間にティファは酒でも飲んだんだろうか。俺が何の受け答えをしてもとろりと頬を緩めてくれる。自分は今満たされているのだと……理由はいまいちわからないが、表情で気持ちを俺に伝えてくれる。

どうしたら、この小恥ずかしい状況を脱しつつティファの笑顔を守れるだろう。色々考えた挙句頭を少し起こして、無防備に半開きになっている唇に自分のそれを柔らかく重ねると、今度はティファの方が照れた様子を見せた。

 

「…。……不意打ち」

「ティファが無防備だから」

「見惚れてたの」

「…見惚れてた?」

「……あ」

 

誰に? なんて確かめるほど俺も馬鹿ではない。ティファは何度か目を彷徨わせたあと、俺の胸に顔を押しつけ黙り込む。どうしてやるのが正解かわからず、ただ素直に喜びが自分の中に溢れるのを感じながら、俺は隠れてしまったティファの顔を覗き込んだ。

 

「……ティファ」

「………ひみつにしてたのに」

「…何を?」

「……かっこいい、って思ってること」

「……」

 

大事な人にそんなこと言われて嬉しくない人間が、この世のどこにいるだろう。

思わずティファの表情を盗み見ることをやめたのは、自分の方がだらしない顔をしている自覚があったから。一気に緩んだ頬の筋肉は戻らず、自分でも戸惑うくらいに緩い。こんな顔を見られたら最後、ティファはもう格好いいなんて思わなくなるかもしれないと、馬鹿げたことを考えるほどに。

 

「…クラウド」

 

ふと腕の中の、拗ねたように聞こえるティファの声に呼ばれる。表情が回復しないままだったから抱きしめたまま返事をすると、ティファはゆっくりこちらを上目で見上げ、お願いを始めた。

 

「…いまの、ここだけの秘密にしてて」

「……ここだけ?」

「うん。……今夜のクラウドだけの」

「…明日の俺には教えちゃだめか」

「だめ」

「…秘密にできる自信がない」

「…お願い」

「……。ティファの願いを断るほうが無理か」

「…ふふ。……ありがと」

 

今ので安心できたのか、ティファは満足そうに力を抜き、首を伸ばして頬にキスをした。

まだ戻らない頬の緩みを隠すように、その唇へ口付けを返すと、楽しそうな笑い声が唇の先からたくさん溢れた。

 

 

 

 

5分間のないしょ

 

 

 


fin,