遅い時間までお疲れさま

 

その気持ちと 言葉と

あたたかいココアを持って入る クラウドの仕事部屋

 

私の入室に気づいた彼が振り返る

ほっとしたように見せてくれる 柔らかい笑顔が嬉しい

 

「…ティファ」

 

ふと見た彼の仕事机には ばらばらと書類が散らばっている

この感じだと 仕事が終わるまで やっぱりもう少しかかりそう

 

「今日は冷えるね」

 

だから体を冷やさないでね

 

今度はそんな想いもこめて 書類の散らばる机の端に

クラウドの好きなココアを置く

 

夜のゼロ時 明日も仕事

 

彼を急かしてしまうのも悪いから 今夜は先に休ませてもらおう

 

クラウドが椅子に座ったまま ふと

私に体を向け大きく両手を広げてみせたのは

一人そんなことを考えていた最中だった

 

「…え?」

「……え?」

 

先に首を傾げたのは私 次に首を傾げたのは彼

 

まるで 胸に飛び込んできていいよと 言わんばかりの身振り

 

私と意思が まだ疎通できていないことに気づいた彼は

恥ずかしそうに手を下ろし 困ったように呟いた

 

「……違ったか」

「へ……」

「…寒いから、あたためて欲しいのかと」

 

目を逸らされながら ぼそりとそう告げられて

私の頭の中で ぱん と幸福がはじける

 

もしかして もしかして 抱きしめてくれようとしたの?

 

私が 今夜冷えるなんて言ったから あたためてくれようとしたの?

 

(……クラウド)

 

「…ち、」

「?」

「ち、違わない、です」

 

クラウドに負けないくらい 顔を桃色に染めながら

元の姿勢に戻ろうとする彼を止める

 

本当はもう 寒さなんて感じていない

だけどあなたの気持ちが嬉しいから

 

あなたに あたためてほしいから

 

「……ん」

 

クラウドは何度か瞬きをしたあと はにかむように口元を緩め

再び両腕をこちらに広げてくれる

 

ちょっぴり緊張しながら飛び込んだその胸は 抱きしめてくれたその腕は

想像のものよりもずっと 優しく 心地が良かった

 

「……寒くないか」

「うん。……クラウドは?」

「…あったかいよ」

 

私の首元に顔を埋めながら小さく呟いたクラウドの声は

持ってきたココアよりずっと甘く ずっと柔らかい

 

私たちは 飲み物が冷めても しばらく抱きしめあっていた

心がふやふやになるまで  二人の心が満ちるまで

 

 

                                

 

 

 U than Cocoa

 

 

 


fin,