ティファ、ティファ、ティファ。

 

つよく抱きしめる腕の中、三度その名を呼んでも返事が返ってこないことから、すぐに応答がない理由を悟ってため息をつく。

 

またやってしまった。心の中一人呟き、色々とあまり刺激しないよう体を起こす。ベッドと俺に挟まれているティファは、やわらかな体をそのままにすやすやと寝息を立てていた。

 

「……ティファ」

「……」

「……。…ごめん」

 

本人に届いてはいないだろうが、一応謝る。無理をさせた挙句にティファの気を失わせた自覚があるからだ。ティファの寝顔が穏やかで幸せそうなことだけが救いかもしれない。

 

肘をティファの顔の両脇につき体を支えてから、もう一度ため息をつく。汗をかいたせいで額にまとわりついているティファの前髪をそっとのけてやると、わずかに口元が緩んだ気がした。

 

(……)

 

ひとまず、まだ……眠る気がなかった自身とティファの後処理をする。一通り終えたあと、足元でぐちゃぐちゃに丸まっているシーツを引っ張り、ふたりの体にかける。脱力している体をこちらに抱き寄せても、ティファが起きる気配はなかった。

 

(……はあ)

 

甘い洗髪剤の香りのするティファの頭に顔を埋めてから、再度声なきため息をつく。

 

一週間ぶり、だった。ティファの体に触れるのはもちろん、ティファの笑顔をみるのも、ティファと話をするのも。だから過度に求めてしまうのも致し方ないと、自分の中でティファに甘えている部分があった。それは言わずもがな、今回に限った話ではないから。

 

長期出張から帰ってきた日の夜は、ほぼ確実にティファから離れられなくなってしまう。ティファはよほどのことがない限り俺を拒むことはせず、「そんなに慌てなくても自分は逃げない」と笑ってくれたり、「自分も待っていた」と一緒になって溺れてくれたりする。最中は無我夢中で正直いつも以上に気遣いができなくなってしまうが、こうして我に返るたびに思う。無理ばかりさせてごめんと、受け入れてくれてありがとうと、それと……。

 

「……ん、」

 

無心で滑らかな背中を撫でていたら、腕の中でティファがみじろぎをする。顔を覗き込むとわずかに揺れているまつ毛。起こしてしまったかと様子を伺っていたけれど、ティファは目を覚ますことはせず、何故か嬉しそうに大きくため息をつき俺に身を寄せた。

 

「…クラウド……」

「……」

 

柔らかい声で呟かれる名前。早速夢を見始めているのだろうか。まるで呼びかけるように俺の名を口にするティファ。愛おしさが込み上げてくるのを感じながら、その体を包み込むように抱きしめ直す。それから馬鹿なことを願う。夢の中の俺はせめて、ティファに優しくできているようにと。

 

「……ティファ」

 

返事がないのは分かった上で、大切な大切な名前を呼んだ。

 

大切な人のくれる体温に導かれるように、俺も自分の意識をそっと手放した。

 

 

 

1. Name

 

 



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